Lee Morgan / The Cooker

一曲目の「チュニジアの夜」が、かなり粘っこい。そんなに糸を引かなくてもと思うのだが。そんな感じで聴き始め、メンバーを確認すると、いずれも音を溜めるジャズマンである。4ビートジャズの基本は、2と4拍に重きを置く。さらに、それを引きずるように重心を後ろにずらす。この感覚が堪らない。リー・モーガンのトランペットにペッパー・アダムスのバリトンサックスが合わさって、重心のずれがさらに強調される。

ところがである。アドリブの受け渡しに入ると、それぞれのメンバーがその粘り気を断ち切るようなプレイを炸裂。4ビートジャズの醍醐味がここにある。ちなみに、アルバムタイトルのThe cookerという曲は収録されていない。なるほどと思った。見事な包丁さばきで切り刻んでいく料理人ということなのだ。

1. A Night In Tunisia
2. Heavy Dipper
3. Just One Of Those Things
4. Lover Man
5. New-Ma
6. Just One Of Those Things [alternate take]

Lee Morgan - trumpet
Pepper Adams - baritone saxophone
Bobby Timmons - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on September 29, 1957at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Lee Morgan / City Lights

ブルーノート史上、最悪のジャケット。タイトルCity Lightsをイメージしてデザインしたのだろうが、何も伝えるものがない。むしろ、本作の価値を下げてしまっている。タイポグラフィも手抜き。次々と企画される新鋭リー・モーガンのアルバムに裏方が対応できなかった感じだ。

つまり、50年代半ばを過ぎて、モーガンが飛ぶ鳥を落とす勢いだったことの証明でもある。全5曲中、3曲目と5曲目を除いてベニー・ゴルソンの作品。所有する輸入盤CDのジャケット内には、ゴルソンの写真が大きく掲載されている。本来ならば、ゴルソンの名前をジャケットに記すべきはずだった。ビジネス的には欠点のあるアルバムだが、落ち着きと気品がある演奏。ジャズが持っている一つの内在するエネルギーを感じる。

1. City Lights
2. Tempo De Waltz
3. You're Mine, You
4. Just By Myself
5. Kin Folks

Lee Morgan - trumpet
George Coleman - tenor saxophone, alto saxophone
Curtis Fuller - trombone
Ray Bryant - piano
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums

Recorded on August 25, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Lee Morgan / Lee Morgan Vol.3

全5曲、ベニー・ゴルソンの作品。アルフレッド・ライオンのプロデュースでリー・モーガン名義ながら、陰の立役者はゴルソンである。原盤ではナット・ヘントフがライナーノーツを担当。ゴルソンによる全曲の解説を引用している。その中でも、I Remember Cliffordの解説が最も長く、翻訳すると以下のようになる。

「この曲は、亡くなってしまった偉大なクリフォード・ブラウンに敬意を表している。彼は私の最愛の友人であり、ミュージシャン仲間だった。3週間を要して、彼自身と彼の演奏方法を追憶するメロディーを手に入れようとした。〈中略〉作曲している間、ふさぎ込んでいた。なぜなら、この各音符が亡くなった友人に向けていることに気づいたからだ」。アルバムタイトルはVol.3であるが、せめてサブタイトルをI Remember Cliffordにして欲しかった。

1. Hasaan's Dream
2. Domingo
3. I Remember Clifford
4. Mesabi Chant
5. Tip-Toeing

Lee Morgan - trumpet
Benny Golson - tenor saxophone
Gigi Gryce - alto saxophone, flute
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Charlie Persip - drums

Recorded on March 24, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.