Keith Jarrett / Standards, Vol.1

本作品は、こう紹介されている。「それまでオリジナル曲を中心に演奏していたキース・ジャレットが、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットという究極のメンバーと共に、初めて本格的にスタンダードナンバーに取り組んだ1枚。現代ジャズ・ピアノトリオの礎を築いた歴史的傑作としても特筆される。ピーコックとディジョネットを加えた“スタンダーズ・トリオ”の記念すべき第1作」。しかしながら、所有するLPとCDにはThe Standards Trioの記載はなく、Keith Jarrett Trioとなっている。本作以降のアルバムも同様である。つまり、The Standards Trioとはマスコミが勝手につけた名称なのだ。

油井正一氏によるライナーノーツには、「ピアノプレイヤーとしてのキース・ジャレットは、超をつけてもいいくらいの一流である。そうした意味で、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットという、各楽器の超一流奏者でつくったトリオによる本アルバムは、正直いって〈ケルン・コンサート〉以後僕の最も気に入った作品となった」とある(1983年9月4日付け)。残念ながら、どこが気に入ったのかを書いていないが、自分はこの3人の根底にある「スピード感」だと思っている。

1. Meaning Of The Blues
2. All The Things You Are
3. It Never Entered My Mind
4. The Masquerade Is Over
5. God Bless The Child

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on January 11 & 12, 1983 at The Power Station, Manhattan, NYC.

Keith Jarrett / Invocations The Moth And The Flame

邦題『沈黙への誘惑・夢幻』。邦題を付けたことで、なおさら難解になった感じだ。ここでのタイトルは単なる記号としても、不思議な2枚組である。一枚目が1980年10月録音、二枚目が79年11月録音で、一年近い間があり、しかも年代が逆転している。録音場所も修道院と音楽スタジオ。2つの全く異なる録音を一つのアルバムにまとめた理由が不明。LPのライナーノーツを担当した野口久光氏は、そこのことに一切触れていない。「最近のキースの音楽(演奏)に説明を加えることはいかにも無意味のように思えるので・・・」と書いてあり、逃げられてしまった。このアルバムのコンセプトについて、野口氏なりの意見を知りたかったのだが。

スタンダーズ・トリオが始動するのは83年1月。本アルバムInvocations The Moth And The Flameからスタンダーズまでの3年間は、キースはジャズから遠のいた。ジャズピアニストでないキースの実験開始アルバムである。今だから言えるのだが、この実験は大失敗に終わった。

Disc 1 - Invocations
1. First (Solo Voice)
2. Second (Mirages, Realities)
3. Third (Power, Resolve)
4. Fourth (Shock, Scatter)
5. Fifth (Recognition)
6. Sixth (Celebration)
7. Seventh (Solo Voice)

Keith Jarrett - pipe organ, soprano saxophone
Recorded in October 1980 at Ottobeuren Abbey.

Disc 2 - The Moth And The Flame
1. Part I
2. Part II
3. Part III
4. Part IV
5. Part V

Keith Jarrett - piano
Recorded in November 1979 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg.

Keith Jarrett / Sleeper

1979年4月16日の中野サンプラザでのライブ演奏が、時を越えて2012年7月にリリース。なので、Sleeperというタイトル。この録音があった頃、中野に住んでいながらキースのライブは知らなかった。大学4年になって、卒論とジャズ研、そして就職という面倒なことに悩み始めていた頃。もちろん、金もなかった。

何故に、30年以上も音源を眠らせていたのか。一切の欠点が見つからないアルバム。ECMのManfred Eicher(マンフレート・アイヒャー)のやりかただろう。音楽をビジネスにする。それは正しい。それだけではなく、その時代の音楽を発信していく使命をレーベルは持っている。それをないがしろしてきたアイヒャーは極めて怪しい人物。ジャズを自分の手玉にしてきた男だ。アイヒャーによって道を切り開いたキース。アイヒャーによって道を閉ざされたキース。

Disc 1
1. Personal Mountains
2. Innocence
3. So Tender

Disc 2
1. Oasis
2. Chant Of The Soil
3. Prism
4. New Dance

Keith Jarrett - piano, percussion
Jan Garbarek - tenor saxophone, soprano saxophone, flute, percussion
Palle Danielsson - double bass
Jon Christensen - drums, percussion

Recorded on April 16, 1979 at Nakano Sun Plaza, Tokyo.