Keith Jarrett / Standards Live

36年前のライブ演奏。決して古さを感じない。むしろ、聴けば聴くほど新たな発見がある。ゲイリー・ピーコックのベースソロの間に、キースのピアノがじわじわと入ってきて、主役がピアノに入れ替わる。そういう流れを聴くと、「えっ?こんなことやっていたのか!」と思わずニヤリとしてしまう。

アルバムStandards Vol.2が1985年にリリースされた頃から、通称”スタンダーズ・トリオ”と呼ばれるようになったと思うのだが、必ずしもスタンダードだけを演奏するトリオではない。例えば、本作に収録されたThe Wrong BluesとThe Old Countryは、自分が所有する他のアルバムでは見つからなかった。キースのディスコグラフィーを見ても、これらの曲が収録されたのは一度限りである。つまり、スタンダードを演奏しながらも、忘れ去られた曲の掘り起こし作業に努めていたことが分かる。

1. Stella By Starlight
2. The Wrong Blues
3. Falling In Love With Love
4. Too Young To Go Steady
5. The Way You Look Tonight
6. The Old Country

Keith Jarrett - piano
Jack DeJohnette - drums
Gary Peacock - bass

Recorded on July 2, 1985 at the Palais des Congres Studios, Paris.

Keith Jarrett / Changes

訃報が届いた。9月5日、ゲイリー・ピーコック他界。享年85。それに符合するようにアルバムChangesが手元に届いた。長年探していたアルバムだが、中古CDが高価で手に入れることができなかった。昨年、再発されたことを知り購入。まるで、ピーコックからの別れの挨拶のようである。アルバムStandards Vol.1 & 2と同時に録音されたセッション。スンダード集の2枚に対して、即興演奏によるもの。録音データが正しければ、1983年1月11日と12日の2日間で、3枚のアルバムを録音したことになる。

CD帯には、「偶発的に生まれた即興演奏をまとめた1枚」とある。だが、果たして偶発的だったのだろうか。2日間のセッションで、スタンダード11曲を一気に録音し、残りの時間はトリオでの即興演奏に挑戦してみようと三人(キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネット)の狙いがあったような気がする。特にピーコックは、自分名義のアルバムTales Of Anotherの続編を作りたかったのだろう。そう考えると、ピーコックのベースの一音一音に凄みを感じてしまう。合掌。

1. Flying Part One
2. Flying Part Two
3. Prism

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on January 11 & 12, 1983 at The Power Station, Manhattan, NYC.

Keith Jarrett / Standards, Vol.2

1983年1月11日と12日のセッションで、14曲を録音し3枚のアルバムに分散された。Standards, Vol.1 & 2、そしてChangesである。Vol.1は1983年中にリリース。Vol.2は85年、Changesは84年。ここにECMレーベルのいやらしさがある。ジャケットに大きくStandards, Vol.1と記載しながら、続編Vol.2をタイムリーにリリースしない。聴き手(買い手)のことを無視した作り手(売り手)のロジックを優先。

そんな不満が残るアルバムであるが、CDのライナーノーツで熊谷美広氏が絶賛。「3人が時に溶け合い、そして時に自由に振る舞い、スタンダードという定番の楽曲に、まったく新たな生命を吹き込んでいる。本当に革命的で、衝撃的で、そしてとても芸術的なピアノトリオ・アルバムだ」。その通り。〈新たな生命〉という表現がぴったりくるアルバムなのだ。

1. So Tender
2. Moon And Sand
3. In Love In Vain
4. Never Let Me Go
5. If I Should Lose You
6. I Fall In Love Too Easily

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on January 11 & 12, 1983 at The Power Station, Manhattan, NYC.