Bob Dylan / World Gone Wrong

アルバムの邦題は『奇妙な世界に』。悪くない。前作Good As I Been To Youに続いて、ギターの弾き語りによるトラディショナル曲集。グラミー賞ベスト・トラディショナル・フォーク・アルバムを受賞している。対象アルバムがどれだけあったのかは知らないが、ジャケットを見ると、前作の「寝ぐせヘアスタイルと無精ひげのディラン」に比べ、明らかなメッセージを感じる。緑を基調としたジャケット。ディランの顔の右半分が黒で潰れていて、その上には悲痛な顔の絵画。さらには、ディラン自身による全曲の解説が、ジャケット内に記載されているのだ。

前作は1940年代の曲を中心に組み立てたが、本作はさらに遡って30年代が中心。この2作の録音の間に、デビュー30周年記念コンサートが1992年10月16日に開かれた。多数のミュージシャンが集まり、それぞれがディランの作品を披露。そこで、ディランは何かを感じたのだろう。「多くの仲間がオレの曲を歌ってくれたので、オレはトラディショナルの掘り起こしをさらに進めよう」と。

タイトル曲World Gone Wrongは、ギターとフィドルのグループMississippi Sheiks(ミシシッピ・シークス)によって1931年に録音された。「俺はもうだめだ、かつてのようにはならない、もうだめなんだ、世界が間違っているから」と繰り返す。5曲目のBlood In My Eyesも、シークスが同年に録音。この曲のディランの解説に、「日常の型にはまった仕事に対する反抗が彼らの強いテーマのようだ。彼らのすべての歌は非常に生々しい。シークスの歌は衰えることなく、現代(新たな暗黒の時代)にも通じる」。邦題は『奇妙な世界に』ではなく、『暗黒の時代へ』が適切だろう。

1. World Gone Wrong
2. Love Henry
3. Ragged & Dirty
4. Blood In My Eyes
5. Broke Down Engine
6. Delia
7. Stack A Lee
8. Two Soldiers
9. Jack-A-Roe
10. Lone Pilgrim

Bob Dylan - vocals, guitar, harmonica

Recorded in Middle 1993.

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