Thelonious Monk / The Last Concerts

アルバムタイトルは「最後のコンサート」だが、コンサートは複数形になっている。その理由は、1975年7月のニューポート・ジャズ・フェスティバル、72年6月のビレッジ・バンガードのライブを収録しているため。さらには、ボーナストラックとして66年3月のフランスでのライブが追加されている。複数であることは別として、モンクにとって75年7月が最後のライブであった訳ではない。英文ライナーノーツには、次の記述がある。

Considering that none of the three aforementioned 1976 performances had been recorded, this date marks Monk's last existing notes ever.(前述の1976年の3回の公演はいずれも録音されなかったことを考慮すると、この日付はモンクの現存する最後の記録である)。つまり、75年7月は、「記録された最後のコンサート」ということになる。そして、記録されたなかった76年の公演を終えた後、モンクは6年間の音楽活動を停止して、82年2月17日に他界。

なお、ライナーノーツによると、ビレッジ・バンガードはプライベート録音、フランスでのライブはラジオ放送音源とのこと。音質の悪さは致し方ないが、計152分の2枚組CDは、記録として十分に価値がある。

Disc 1
1. Announcement
2. I Mean You
3. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are
4. We See
5. Misterioso
6. 'Round Midnight
7. Straight No Chaser
8. Off Minor
9. 'Round Midnight

Disc 2
1. Hackensack
2. Epistrophy (Theme)
3. Evidence
4. Blue Monk
5. Rhythm-A-Ning
6. Bright Mississippi
7. Epistrophy (Theme)
8. Blue Monk
9. Crepuscule With Nellie
10. Rhythm-A-Ning

Thelonious Monk - piano

Disc 1: tracks 1-6
Paul Jeffrey - tenor saxophone
Larry Ridley - bass
T.S. Monk - drums
Recorded on July 3, 1975 at Lincoln Center, Newport Jazz Festival, NYC.

Disc 1: tracks 7-9, Disc 2: tracks 1-7
Paul Jeffrey - tenor saxophone
Dave Holland - bass
T.S. Monk - drums
Recorded on June 15, 1972 at The Village Vanguard, NYC.

Disc2: tracks 8-10
Charlie Rouse - tenor saxophone
Larry Gales - bass
Ben Riley - drums
Recorded on March 23, 1966 in Amiens, France.

秋吉敏子 / Remembering Bud - Cleopatra's Dream

「Kindle Unlimited 読み放題」で購入した雑誌『ジャズ批評』2024年5月号。その特集は、「ルディ・ヴァン・ゲルダー生誕100周年」。サブタイトルは「伝説のエンジニアが追及した"ジャズの音"とは!?」となっている。自分自身は、いわゆるRVGサウンドに拘りを持っていないが、どんなアルバムが取り上げられているかと読んでみた。そこでは、本作を次のように紹介している。

「秋吉敏子が最も敬愛するピアニスト、バド・パウエルのオマージュ作品。レイ・ドラモンドやルイス・ナッシュといった90年代バップ・リバイバルの先頭を走っていたプレイヤーたちと共演している。もっと立体的な音にも出来たのだと思うが、50年代かそれ以前の雰囲気を出すために、中央に集中した音作りをしているのかもしれない。秋吉が縦横無尽に繰り出すビバップのインディオムは聴いて実に爽快。」

この「縦横無尽」という言葉に惹かれて本作を購入。確かに実に爽快。そして、ジャケット裏面には、1964年にニューヨークで撮影した秋吉とパウエルのツーショット。アルバムとしては、憎い演出である。残念なのは、本作を録音するに至った経緯など、秋吉のコメントが載っていないこと。

1. Cleopatra's Dream
2. Remembering Bud
3. Un Poco Loco
4. Oblivion
5. Celia
6. I'll Keep Loving You
7. Parisian Thoroughfare
8. Budo
9. Tempus Fugit
10. Dance Of The Infidels

Toshiko Akiyoshi - piano
George Mraz - bass (tracks 2-8)
Ray Drummond - bass (tracks 1,9,10)
Lewis Nash - drums (tracks 1,3,6-10)
Al Harewood - drums (tracks 2,4,5)

Recorded on 31 July 1990 and 1 August 1990 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Charles Lloyd / Lift Every Voice

2枚組、全18曲、収録時間2時間10分。力作であり、全体的に大河がゆっくり流れるような雰囲気を醸し出している。しかしながら、いまひとつメリハリが足りない。全体を通してリズムに大きな変化がないから、流されていく感じだ。そして、曲によって二人のベーシストを使い分けているが、その効果がよく分からない。一曲だけは、その二人が同時に参加しているので、単純に録音スケジュールによる使い分けとは思えない。

また、クレジットを見ると、ロイドはtarogato(ターロガトー/タロガトー)という楽器も演奏している。Wikipediaで調べたところ、ハンガリーの大衆音楽で使われる木管楽器で、ソプラノサックスに似た形をしていて柔らかい音が出るとのこと。ロイドのソロによるDisc 1のラスト曲Hafez, Shattered Heartで、この楽器を使っている。蛇足ながら、ECMらしくないアルバム。CDのラベルがDisc 1とDisc 2で逆になっていて、製造工程でのミス。Amazonに返品するのも面倒で、しかも、最後の在庫一枚だったのだ。

Disc 1
1. Hymn To The Mother
2. You Are So Beautiful
3. Amazing Grace
4. East Virginia, West Memphis
5. What's Going On
6. Angel Oak
7. Te Amaré
8. I'm Afraid
9. Hafez, Shattered Heart

Disc 2
1. Rabo De Nube
2. Blood Count
3. Go Down Moses
4. Beyond Darkness
5. Nocturne
6. Wayfaring Stranger
7. Deep River
8. Lift Every Voice And Sing
9. Prayer, The Crossing

Charles Lloyd - tenor saxophone, flute, tarogato
Geri Allen - piano
John Abercrombie - guitar
Marc Johnson - double bass (disc 1 tracks 1,3-7, disc 2 tracks 1,3,5,9)
Larry Grenadier - double bass (disc 1 tracks 2,8, disc 2 tracks 2,4-8)
Billy Hart - drums

Recorded in January and February 2002 at Oceanway and Cello Studios, Los Angeles.