Charles Lloyd / The Sky Will Still Be There Tomorrow

輸入盤見開き紙ジャケット内側に、チャールス・ロイド自身による解説が掲載されている。その中に、下記のようにこのアルバムの制作に至る経緯が書かれていた。そこでの2020年の暴力行為とは、ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性が白人警官に膝で首を押さえつけられ死亡したことと、その後の全米規模のデモを指しているのだろう。

繰り返される人種差別。それに対して、何らかの形で表現したかったロイドは、新型コロナで3年間の音楽活動が制限された。The Sky Will Still Be There Tomorrow(明日も空はあるだろう)とは、「希望を捨てずに」を意味していると受け取りたい。

Under the imposed seclusion of COVID and the intense rise of violence over the Spring & Summer of 2020, I became increasingly agitated. Emotions gone haywire. My heart in knots, my mind at war with the situation. I came to the lunch table one day and told Dorothy that I wanted to go into the studio with Jason, Larry and Brian to make an offering of tenderness. She sent out smoke signals which created an endless back and forth. 2020 slid into 2021, 2022... 2023, before finally getting all of the calendars to overlap and lock.

新型コロナによる強制的な隔離と、2020年の春から夏にかけて暴力行為が激しくなったことを受け、私はますます動揺した。感情が狂ってしまった。心は混乱し、そんな状況と戦っていた。ある日、ランチの席で、感情を取り戻すためにジェイソン、ラリー、ブライアンと一緒にスタジオに行きたいと(プロデューサーの)ドロシーに伝えた。彼女は根気よく調整してくれた。2020年が21年、22年、23年へとスライドしたが、ようやくスケジュールが固まったのだ。

Disc 1
1. Defiant, Tender Warrior
2. The Lonely One
3. Monk's Dance
4. The Water Is Rising
5. Late Bloom
6. Booker's Garden
7. The Ghost Of Lady Day
8. The Sky Will Still Be There Tomorrow

Disc 2
9. Beyond Darkness
10. Sky Valley, Spirit Of The Forest
11. Balm In Gilead
12. Lift Every Voice And Sing
13. When The Sun Comes Up, Darkness Is Gone
14. Cape To Cairo
15. Defiant, Reprise; Homeward Dove

Charles Lloyd - tenor saxophone, alto saxophone, bass flute, alto flute
Jason Moran - piano
Larry Grenadier - bass
Brian Blade - drums, percussion

Recorded in March 2023.

Stanley Turrentine / Common Touch

ブルーノートの創立85周年を記念した、日本独自企画の最新リイシュー・シリーズ。そのカタログを閲覧したら、次のような商品解説。『スタンリー・タレンタイン&シャーリー・スコット夫妻が、息の合ったハーモニーを聴かせる60年代後半の快作。ボブ・ディランの「風に吹かれて」のカヴァーに注目。豪快なトーンでテーマをブロウするタレンタインに、シンプルかつ軽快なスコットのオルガンが好ましく絡む。ファンキーな「バスター・ブラウン」もオススメ』。

所有するアルバムの中で、ジャズ畑へ持ち込まれたディランの作品は、キース・ジャレットのMy Back Pages、チャールス・ロイドのMasters Of Warのみだった。まさか、タレンタインがBlowin' In the Windを演奏するなどとは想像もしなかった。本作を迷わず購入して、さっそく聴いてみると、原曲をそのままブルージーな感じに仕上げているだけ。ちっとも「風に吹かれてイナイ」。

1. Buster Brown
2. Blowin' In the Wind
3. Lonely Avenue
4. Boogaloo
5. Common Touch
6. Living Through It All

Stanley Turrentine - tenor saxophone
Shirley Scott - organ
Jimmy Ponder - guitar
Bob Cranshaw - electric bass
Leo Morris - drums

Recorded on August 30, 1968 at Ruby Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Lee Morgan / Infinity

1965年11月録音ながら、リー・モーガンの死後9年経った81年にリリースされたアルバム。なぜ15年以上もテープを眠らせていたのか。65年に入り、モーガンはリーダーアルバム4枚The Rumproller、The Gigolo、Cornbread、Infinityを録音。前3枚はタイムリーにリリースされたが、本作Infinityのみが取り残されてしまった。演奏内容が他の3枚に対して劣っていた訳ではなく、単純に販売が追い付かなかったのか、立て続けに世には出さないという当時の販売戦略だったのか。

だが、4作を聴き比べると、残念ながら本作に目新しさは感じられない。それらは全て、フロント2管、もしくは3管というメンバー構成のためだろう。原田和典氏のライナーノーツによると、本作の録音を終えた夜、ニューヨークの新装ジャズクラブでこのメンバーは生演奏をやったそうだ(ベーシストのみは交代)。ならば、そのライブアルバムを残して欲しかった。そして、タイムリーにリリースしていれば、そのアルバムの価値はInfinity(無限大)に高まったはずなのだ。

1. Infinity
2. Miss Nettie B.
3. Growing Pains
4. Portrait Of Doll
5. Zip Code

Lee Morgan - trumpet
Jackie McLean - alto saxophone
Larry Willis - piano
Reggie Workman - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on November 16, 1965 at Ruby Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.