Miles Davis / At The Blackhawk Vol.1

マイルス自叙伝②には、以下のように書かれている。妥協を許さないマイルスであるが、ブラック・ホークでのライブにハンク・モブレーの代役を当てることはできなかったのだろう。たしかに、注意深くアルバムを聴くと、マイルスとモブレーの駆け引きは一切ない。CDのライナーノーツによると、1961年4月4日から30日までブラックホークに出演したらしい。マイルスにとっては退屈な一か月間だった訳である。

「その1961年の春、4月だったと思うが、サンフランシスコの『ブラックホーク』の仕事に、自分で車を運転していくことにした。ニューヨークでは『ビレッジ・バンガード』に出ていたが、ハンク・モブレーがイマイチだったから、音楽に飽きがきはじめていた。〈中略〉ハンクとの演奏は、オレの創造力を刺激しなかったし、およそ面白くないものだった。そんなこともあって、オレは自分のソロが終わると、次の出番まで、ステージを降りるようになった。〈中略〉コロンビアは、オレ達を『ブラックホーク』でライブレコーディングしたが、バンドの連中もオレも、クラブに持ち込まれたたくさんの機材が気になってやりにくかった。スタッフが寄ってたかって音量のレベルなんかを調べたりして、調子が狂ってしまった」。

1. Walkin'
2. Bye Bye Blackbird
3. All Of You
4. No Blues
5. Bye Bye
6. Love, I've Found You

Miles Davis - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums

Recorded on April 21, 1961 at The Blackhawks, San Francisco.

Miles Davis / Someday My Prince Will Come

マイルス自叙伝②で、マイルスはこう説明している。『プロデューサーのテオ・マセロは、「ポーギーとベス」や「スケッチ・オブ・スペイン」辺りから、テープを切ったりつないだりして編集するようになっていたが、このレコードも、そうやって作ったんだ。さらにオレとトレーンは、ソロを後からレコーディングしたりもした。この編集方法はテオのトレードマークのようになったが、当時は珍しくて変わった、興味深いやり方だった。「サムディ・マイ・プリンス・ウイル・カム」で初めて、ジャケットに黒人の女性を使うようコロンビアに要求した。それで、フランシスがあのレコードのジャケットに登場したってわけだ。オレのレコードだったし、オレはフランシスの「プリンス」でもあったから、当然だろ。それから、プフランシングという曲は、彼女のために書いたんだからな』。

テオ・マセロによるテープの切り貼りは知っていたが、ソロを別に録音して被せるという手法まで導入していたとは思わなかった。恐らく、ハンク・モブレーが抜けた5曲目のTeoで試みたのだろう。輸入盤CDには、本作の詳しい録音データが掲載されている。Teoはモブレーを含めて1961年3月20日に録音したが、完成に至らず。翌21日にモブレー抜きで2回録音している。1回目の録音テープを流しながら、マイルスとコルトレーンはソロの部分を録り直したということだろうか。そして、フィリー・ジョー・ジョーンズが1曲だけ参加したBlues No.2は、LPには収録されなかったが、CDではボーナストラックとなった。それまでは、オムニバス盤Circle In The Roundに収まっていたのだ。

1. Someday My Prince Will Come
2. Old Folks
3. Pfrancing
4. Drad-Dog
5. Teo
6. I Thought About You
7. Blues No.2
8. Someday My Prince Will Come [alternate take]

Miles Davis - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone (tracks 1-4,6-8)
John Coltrane - tenor saxophone (tracks 1,5)
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums (except track 7)
Philly Joe Jones - drums (track 7)

Recorded on March 7, 20 & 21, 1961 at Columbia 30th Street Studios, NYC.

Miles Davis / The Complete 1960 Amsterdam Concerts

アムステルダムのConcertgebouw (コンセルトヘボウ)での1960年4月と10月のライブ演奏が、半世紀以上経った2013年3月にリリース。4月はコルトレーン、10月はソニー・スティットが参加。しかし、コルトレーンの調子は決して良くない。やる気が感じないのだ。その理由をマイルス自叙伝②で見つけた。

「スケッチ・オブ・スペインが終わった1960年の3月から4月いっぱいは、ヨーロッパツアーに出て、気分転換することにした。ノーマン・グランツが計画したJ.A.T.P.のツアーだった。ところが、ジョン・コルトレーンが行きたがらず、出発前にバンドを辞めようとしていた。〈中略〉奴はヨーロッパに行くことは承知したが、ツアーの間中、ぶつぶつ文句を言いながら、いつも一人っきりになっていた。ツアーに出る前に、これが終わったら辞めると、きっぱり言い切っていた」。コルトレーンは59年末にアルバムGiant Stepsの録音を完了。今後の自分自身の構想を練っていたのだ。マイルスとコルトレーンが共演する最後のライブ演奏を捉えたアルバムなのである。

Disc 1
1. Introduction by Norman Granz
2. If I Were A Bell
3. Fran-Dance
4. So What
5. All Blues
6. The Theme
7. Whisper Not
8. Ease It

Miles Davis - trumpet (tracks 1-6)
John Coltrane - tenor saxophone (tracks 1-6)
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums

Tracks 1 - 6
Recorded on April 9, 1960 at Concertgebouw, Amsterdam.
Tracks 7 & 8
Recorded on October 15, 1960 at Concertgebouw, Amsterdam.

Disc 2
1. Introduction by Norman Granz
2. But Not For Me
3. Walkin’
4. All Of You
5. So What
6. The Theme
7. Stardust
8. Old Folks
9. All Blues
10. The Theme

Miles Davis - trumpet (tracks 1-6,9,10)
Sonny Stitt - alto saxophone
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
Recorded on October 15, 1960 at Concertgebouw, Amsterdam.