Keith Jarrett / At The Deer Head Inn

演奏者と観客が一体となった真のライブアルバム。それだけではなく、このアルバムを聴いていると、まるで自分が観客の一人であるかのような気分になってくる。キースのピアノは凄いんだけど、あの唸り声だけは勘弁してくれという人がいる。まぁ、その気持ちは分かるのだが、だったらキースを聴くなよと言いたい。あの唸り声を含めてキースの「芸」なのだ。さて、キースがライナーノーツを書いていて、以下のように締め括っている(訳:坂本信氏)。

「暖かくて湿気が多く、雨模様の霧のかかった秋の夜、ポコノの山間での演奏だった。店の中にはたくさんの人で埋まり、入りきれない人たちは外で網戸越しに聴いていた。友人のビル・グッドウィンがこの模様を、ぼくのためにレコーディングしておいてくれたけど、あとで聴いてみたとき、これはいつか発表しなければと思った。皆さんもこのテープの演奏から、ジャズの何たるかを聴き取ることができると思う」。キース自身が評価しているライブアルバムなのだ。

1. Solar
2. Basin Street Blues
3. Chandra
4. You Don't Know What Love Is
5. You And The Night And The Music
6. Bye Bye Blackbird
7. It's Easy To Remember

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Paul Motian - drums

Recorded on September 16, 1992 at The Deer Head Inn, Delaware Water Gap, PA.

Keith Jarrett / Bye Bye Blackbird

マイルスが65歳で死去した1991年9月28日から二週間後の録音。当時、マイルスのLPを片っ端から聴いた記憶がある。一方、キースはこの録音を決意した。キースの唸り声がしっかりと聴き取れる。マイルスへの想いが多くの言葉(唸り)になったのだろう。マイルスが愛した曲で構成されているが、5曲目のFor Milesはキース、ピーコック、ディジョネットによる合作。曲と言うよりマイルスへの哀悼文。そして、3人の連名による実際の哀悼文がジャケット内に記載されている。その最初と最後を訳してみた。

「Miles was a medium, a transformer, a touchstone, a magnetic field; the authentic minimalist (where, although there were so few notes, there was so much in those few notes). ..... Miles never forgot the music; we will never forget Miles. マイルスは媒体、変換器、試金石、磁場であり、本物のミニマリストだった(数少ない音に多くのものを含んでいた)。 ..... マイルスは音楽を決して忘れなかった。我々もマイルスを決して忘れない」。来月末には、マイルスが旅立ってから早30年になる。

1. Bye Bye Blackbird
2. You Won't Forget Me
3. Butch And Butch
4. Summer Night
5. For Miles
6. Straight, No Chaser
7. I Thought About You
8. Blackbird, Bye Bye

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on October 12, 1991 at Power Station, NYC.

Keith Jarrett / The Cure

スタンダーズ・トリオの中でも地味な存在。その理由は2つ。落書きみたいなジャケット、そしてThe Cureというタイトル。ジャケット右下に小さく書かれているLive at Town Hall, New Yorkをタイトルにして、ニューヨークをイメージするイラストにしていれば、もっと脚光を浴びたはず。

そうしないのがECMらしくもあるが、そんな思惑を無視して邦題は「ボディ・アンド・ソウル」としてしまった。「ザ・キュア」では反応が低いと感じたのか。ECMの自信、国内販売ユニバーサル・ミュージックの不甲斐なさ。演奏の中身は、キース作The Cureを除いて、どれもスタンダード中のスタンダード。ところで、自分が所有するアルバムの中でタウンホールをタイトルに入れたのは、下記のように多数ある。ECMは重複を避けたのだろう。

Louis Armstrong / The Complete Town Hall Concert (May 1947)
Thelonious Monk / The Thelonious Monk Orchestra At Town Hall (February 1959)
Charles Mingus / The 1962 Town Hall Concert (October 1962)
Ornette Coleman / Town Hall 1962 (December 1962)
Charles Mingus / Town Hall Concert 1964 (April 1964)
Bill Evans / Bill Evans At Town Hall (February 1966)
Anthony Braxton / Town Hall 1972 (May 1972)

1. Bemsha Swing
2. Old Folks
3. Woody'n You
4. Blame It On My Youth
5. Golden Earrings
6. Body And Soul
7. The Cure
8. Things Ain't What They Used To Be

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on April 21, 1990 at The Town Hall, NYC.