Keith Jarrett / Byablue

1976年10月14日から16日の録音。この3日間の録音が、本作とアルバムBop-Beに分かれてリリースされた。レコード番号は、Bop-Beが9334、Byablueが9331なので、Byablueが先のリリース。byaが何を意味しているのか分からないが、タイトルの感じから、2つのアルバムは静と動を表現しようとしたのだろう。

この実質的な2枚組で、アメリカン・カルテットの録音を終える。そして、翌月11月5日から、日本でのサンベア・コンサートに臨んだ。結果、10枚組LP(6枚組CD)を世に送り出した。キースには、大きな変曲点がいくつかあるが、ここで一つの区切りにしたことは正解だった。なぜなら、キースのやりたい音楽が、ここからはほとんど感じられないのだ。最後にピアノソロで再度臨んだByablueを除く全6曲中の4曲がポール・モチアンの作品であることも、それを裏付けている。

1. Byablue
2. Konya
3. Rainbow
4. Trieste
5. Fantasm
6. Yahllah
7. Byablue

Keith Jarrett - piano, soprano saxophone, percussion
Dewey Redman - tenor saxophone, musette
Charlie Haden - bass
Paul Motian - drums, percussion

Recorded on October 14, 15 & 16, 1976 at Generation Sound Studios, NYC.

Keith Jarrett / Staircase

現在所有するキースのアルバムは53作品。ソロが11作で、その中で本作同様のスタジオ録音は5作である。スタンダード曲によるソロアルバムThe Melody At Night, With Youを除いて、どのアルバムも曲名は記号のようなもの。例えば、ケルン・コンサートならばPart Iで始まる。一方、本作に収められた曲は、Staircase(階段)、Hourglass(砂時計)、Sundial(日時計)、Sand(砂)という曲名(イメージ)が付けられている。では、イメージを創り上げてから即興演奏に入ったのか、即興演奏のあとに曲名を付けたのか。他のアルバムとの違いを曲名に出しているかので、前者であったと思いたい。

演奏内容は信じ難い。スタジオのピアノの前へ座り、74分を超えるソロを演じること。1976年5月、パリのスタジオで録音というデータしか明らかにされていないので、一日で録り終えたかどうか分からないが、だらだらと時間をかけていたはずはない。緊張感はそう長く続かないものだ。こういうアルバムを聴くと、キースという人間のある種の怖さを感じる。

1. Staircase Part 1
2. Staircase Part 2
3. Staircase Part 3
4. Hourglass Part 1
5. Hourglass Part 2
6. Sundial Part 1
7. Sundial Part 2
8. Sundial Part 3
9. Sand Part 1
10. Sand Part 2
11. Sand Part 3

Keith Jarrett - piano

Recorded in May 1976 at Davout Studios, Paris.

Keith Jarrett / The Survivor's Suite

タイトルには組曲とあるが、Beginning(27分10秒)で始まってConclusion(21分18秒)の2曲で終わってしまう構成。だが、それぞれの曲の中に起承転結があり、何度も聴き込んでいくと一つのドラマを描いているような気がしてくる。さらに注意深く聴き込むと、多重録音している感じだ。多重録音を全面的に否定するつもりはない。しかしながら、アルバムSolo-ConcertsやThe Köln Concertで、究極のソロ・インプロビゼーションを演じたキースに、その必要性があったのだろうか。

トータル48分余りの演奏は、ダレる箇所が全くなく完璧。敢えて言えば、人影のないプール付きの家をジャケットにした点だろうか。せめて煙突から煙が出ていれば人の気配を感じたのに。それより、邦題の『残氓(ざんぼう)』の意味が未だに解らない。

1. The Survivor's Suite - Beginning
2. The Survivor's Suite - Conclusion

Keith Jarrett - piano, soprano saxophone, bass recorder, celeste, drums
Dewey Redman - tenor saxophone, percussion
Charlie Haden - bass
Paul Motian - drums, percussion

Recorded in April 1976 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg.