Dexter Gordon / Jazz At Highschool

昔、坂田明さんと東京町田で飲んだとき、「ジャズマンなんて個人事業主なので、何でも自分でやらないとね」と語ってくれたことを忘れられない。このアルバムが録音された当時のデクスター・ゴードンも、同じ状況だったようだ。声が掛かれば馳せ参じ、仕事を貰っていたらしい。

高校でのジャズクリニックが終わってから、ライブ演奏に臨み、それを捉えたアルバム。一つの仕事を終えてからのライブなので、非常にリラックスした雰囲気を感じ取れる。その一例として、デクスター作Society Red中では、ハービー・ハンコック作のWatermelon Manがベースソロの後に挿入される。「責任」と「解き放された自由」。このバランスが実は大事なんだ。

1. Soy Califa
2. The Shadow Of Your Smile
3. Society Red
4. For All We Know
5. The Blues Up And Down

Dexter Gordon - tenor saxophone
Kenny Drew - piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass
Al Heath - drums

Recorded on August 5, 1967 by The Danish National Radio at a jazz clinic for music students at a high school in Sweden.

Dexter Gordon / Gettin' Around

一曲目の「黒いオルフェ」の特徴的なアレンジ。そして、アルバム全体でリラックスした雰囲気を醸し出しているボビー・ハッチャーソンのヴァイブ。この2点が、このアルバムの大きな売りである。デクスター・ゴードンのディスコグラフィーを見ると、ディスク上でのハッチャーソンとの共演は本作が初めて。共演は、プロデューサーのアルフレッド・ライオンによるアイデアだったのだろう。

ジャズのアルバムタイトルは、収録曲から採用することが多い。だが、本作にはGettin' Aroundという曲は存在しない。"get around"は、「あちこち移動する」とか、「動き回る」という意味。自転車に乗るジャケットの写真とは何となく一致するが、どうもしっくりしない。Wikipediaによると、ゴードンは1960年代初頭から76年にかけて渡欧し、フランスやデンマークを拠点に活動、とあった。つまり、本作はアメリカへ一時帰国した時の録音になる。だから、Gettin' Aroundなのだ。自転車は全く関係ない。

1. Manha De Carnaval
2. Who Can I Turn To
3. Heartaches
4. Shiny Stockings
5. Everybody's Somebody's Fool
6. Le Coiffeur

Dexter Gordon - tenor saxophone
Bobby Hutcherson - vibraphone
Barry Harris - piano
Bob Cranshaw - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on May 28 (tracks 1,5,6) & 29 (tracks 2,3,4), 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Dexter Gordon / One Flight Up

一曲目のドナルド・バード作Tanyaの出だしでシビれてしまう。学生時代に浸っていたジャズ喫茶に、一気にトリップする感じで、この感覚が堪らない。アルバムタイトルをTanyaとすれば、もっと注目されたのだろう。デクスター・ゴードンとドナルド・バードのディスコグラフィーを見ると、ゴードンはこの曲を5回、バードは本作のみの録音である。バードはTanyaをゴードンに譲ってしまったのだ。

4曲しか収録されていないが、曲順での演奏時間は、18分15秒、11分14秒、7分28秒、11分0秒とそれぞれ長尺。しかし、4曲目はCD化でのボーナストラック。LP時代にあまり人気がなかったのは、前作Our Man In Parisの出来が良かっただけでなく、曲数も関係していたようだ。

1. Tanya
2. Coppin' The Haven
3. Darn That Dream
4. Kong Neptune

Dexter Gordon - tenor saxophone
Donald Byrd - trumpet (tracks 1,2)
Kenny Drew - piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass
Art Taylor - drums

Recorded on June 2, 1964 at Barclay Studios, Paris.