Bob Dylan / Desire

ディランのアルバムの中で、Blood On The Tracks(邦題:血の轍)に次ぐ傑作である。ディランがアルバムに収録してきた全曲、約740曲を全て翻訳したが、タイトルをDesire(欲望)とした理由には、いま一つ手が届いていない。

1966年6月17日、3人の白人を銃で撃ち殺したとして逮捕されたルービン・カーター(リングネームはハリケーン)の無実を訴えた曲Hurricaneから始まる。そして、本作の録音直前の75年6月25日に完全独立を果たしたモザンビーク人民共和国を歌ったMozambique、ニューヨークの殺し屋Joseph "Joey" Gallo(ジョゼフ・ジョーイ・ギャロ、1929年4月7日-72年4月7日)をモデルにした曲Joeyへとつないでいく。

さらに、Romance In Durangoは酒場で人を撃った男が、婚約者とドゥランゴという街まで逃亡する話。Black Diamond Bayはベトナム戦争の終焉、もしくはソビエトとのデタントを暗示しているようだ。最後のSara(サラ)は録音時点ではディランの妻の名前。Sara, oh Sara, Don't ever leave me, don't ever go(サラ、サラ、見捨てないでくれ、行かないでくれ)と締め括る。77年6月、10年以上続いたサラとの結婚生活に終止符を打ち離婚。直接的に「欲望」を表現してはいないが、人間の内面にある欲をえぐり出そうしている感じを受けるのだ。

1. Hurricane
2. Isis
3. Mozambique
4. One More Cup Of Coffee (Valley Below)
5. Oh, Sister
6. Joey
7. Romance In Durango
8. Black Diamond Bay
9. Sara

Bob Dylan – vocals, rhythm guitar, harmonica, piano on "Isis"
Scarlet Rivera – violin
Emmylou Harris – background vocals
Rob Stoner – bass guitar, background vocals
Howard Wyeth – drums, piano
Dominic Cortese – accordion, mandolin
Vincent Bell – bouzouki
Luther Rix – congas (track 1)
Ronee Blakley – background vocals (track 1)
Steven Soles – background vocals (track 1)

Recorded in July – October 1975.

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