Bud Powell / Bud Powell's Moods

1954年6月の2つのセッション、そして55年1月のセッションから構成。この期間には他のセッションも行われ、アルバムBud Powell '57としてリリースされている。本来はJazz Originalというタイトルであったが、1957年の再発で意味もなく変更されてしまった。プロデューサーは、どのセッションもノーマン・グランツ。

明らかにバド・パウエルが不調な時期。何故、グランツは精力的に録音を重ねたのだろうか。彼のWikipediaには、こんな一文がある。Norman Granz opposed racism and fought many battles for his artists, many of whom were black.(グランツは人種差別に反対し、アーティストのために数多く戦ってきた。そのほとんどは黒人だった)。

「誰にだって好不調はある。不調なときだからこそ、手を差し伸べなければならない」。そんな気持ちだったのではないだろうか。タイトルは「バド・パウエルの気持ち」だが、これをノーマン・グランツと置き換えても良いのだ。となると、ジャケットはパウエルとグランツのようにも見えてくる。

1. Moonlight In Vermont
2. Spring Is Here
3. Buttercup
4. Fantasy In Blue
5. It Never Entered My Mind
6. A Foggy Day
7. Time Was
8. My Funny Valentine
9. I Get A Kick Out Of You
10. You Go to My Head
11. The Best Thing For You

Tracks 1, 2, 3 & 4
Bud Powell - piano
George Duvivier - bass
Art Taylor - drums
Recorded on June 2, 1954 at Fine Sound Studios, New York.

Tracks 5, 6, 7 & 8
Bud Powell - piano
Percy Heath - bass
Art Taylor - drums
Recorded on June 4, 1954 at Fine Sound Studios, New York.

Tracks 9, 10 & 11
Bud Powell - piano
Lloyd Trotman - bass
Art Blakey - drums
Recorded on January 12, 1955 at Fine Sound Studios, New York.

Bud Powell / Hot House

Kindle読み放題で、原田和典氏の著書『世界最高のジャズ』を見つけた。その中で紹介されていたのが本作。5年余りをパリで過ごしたバド・パウエルが、ニューヨークに戻る直前にフランスの避暑地で録音したプライベート音源。原田氏は次のように書いている。

「パウエルにジョニー・グリフィンが真正面からぶつかり、技の応酬を聴かせてくれる。あきらかにパウエルがグリフィンに刺激され、彼のチョップを受け、それを切替えしているのがかわる。そりゃあ、このパウエルに40年代の機銃掃射のような音使いはもはや、ない。だがこの気迫を前にすると、運指の乱れなどを言及するのは愚の骨頂に思えてくる。モンクの曲を舞台に、パウエルとグリフィンが果てしなく燃え上がる〈ストレート・ノー・チェイサー〉1曲で、このアルバムは”買い”だ」。まさしく同感。しかし、グリフィンは全7曲中の3曲のみに参加なので、チョップの連打ではない。

1. Straight, No Chaser
2. Salt Peanuts
3. Move
4. Bean And The Boys
5. Wee
6. 52nd Street
7. Hot House

Johnny Griffin - tenor saxophone (tracks 1,5,7)
Bud Powell - piano
Guy Hayat - bass
Jacques Gervais - drums

Recorded on August 8-14, 1964 at "Hotel-Restaurant La Belle Escale", Edenville, France.

Bud Powell / Bud Powell In Paris

CD帯から。「ジャズピアノの巨人パウエルが、エリントンのプロデュースの下、異郷の地で残した晩年の傑作。ビバップの名曲を中心に、枯れた味わいのなかにも、絶頂期を思わせる渾身プレイを繰り広げる」。まあ、間違いではないのだが、パウエルは1959年から64年までパリを活動の拠点にしているので、パウエルにとっては「異郷の地」という感覚ではないはず。そして、本作を録音した63年2月の時点ではまだ40歳前(66年7月31日に41歳で他界)。「晩年の傑作」というより、「人生を凝縮して生きたパウエル後期の傑作」という感じなのだ。

それよりも、なぜにデューク・エリントンがプロデュースをしたのか。エリントンの代表的なライブアルバムThe Great Paris Concertは、63年2月1日から23日までの公演をまとめている。つまり、エリントンがパリにいた約1か月の間、パウエルに声を掛けて実現したアルバムということなのだろう。では、エリントンは録音スタジオに足を運んだのか。本作には、録音の日付やスタジオのデータが残っていない。従って、エリントンがどこまで関与したのかは不明。ただし、ジャケットのイラストには、パウエルと思われるスーツ姿の後ろに別の人物が。

1. How High The Moon
2. Dear Old Stockholm
3. Body And Soul
4. Jor-Du
5. Reets And I
6. Satin Doll
7. Parisian Thoroughfare
8. I Can't Get Started
9. Little Benny
10. Indiana
11. Blues In B Flat

Bud Powell - piano
Gilbert Rovere - bass
Kansas Fields - drums

Recorded in February 1963 in Paris.