録音1989年初頭、発売同年9月。全曲ディランの作品。1曲1曲が映画のワンシーンのように仕上がっていて、全10曲を聴き終わるとOh Mercyという映画が完結する感じだ。音の広がりというより、少し霧がかかったような深さに余韻が残る。録音当時、ディラン48歳。50歳を前にして、数年間のブランクからようやく吹っ切れたディラン。1曲目Political Worldでは、「様々な矛盾があっても、我々は政治の世界に生きている。政治の世界では、平和なんてまったく歓迎されてない」と投げ捨てるように歌う。そして、Ring Them Bellsで「鐘を鳴らせ 見えない聞こえない人たちのために/鐘を鳴らせ 泣き叫ぶ子供のために」と。隠れた名曲であり、本作のタイトルにしても良かった曲である。
映画のようなシーンは流れ過ぎ、Shooting Starで終幕。「今夜、流れ星を見て、君を思った」と始まる。大事な人を失った悲しみを書いた曲。そして、「明日、新しい一日が始まる/君に何を言っても遅いかも知れない」と繋げていく。The Traveling Wilburysのアルバムに収められた曲Not Alone Any Moreを改めて聴いた。Roy Kelton Orbison(ロイ・ケルトン・オービソン:1988年12月6日急逝)の声が心に響く。「君はいつも言っていた/いつかきっと/僕はきっとまた帰ってくるって」。この曲をディランは思い浮かべ、オービソンに捧げたShooting Starであることを確信。
1. Political World
2. Where Teardrops Fall
3. Everything Is Broken
4. Ring Them Bells
5. Man In The Long Black Coat
6. Most Of The Time
7. What Good Am I?
8. Disease Of Conceit
9. What Was It You Wanted
10. Shooting Star
Bob Dylan - vocals, guitar, piano, harmonica, 12-string guitar, organ
Malcolm Burn - tambourine, keyboards, mercy keys, bass guitar
Rockin' Dopsie - accordion
Willie Green - drums
Tony Hall - bass guitar
John Hart - saxophone
Daryl Johnson - percussion
Larry Jolivet - bass guitar
Daniel Lanois - production, mixing, dobro, lap steel, guitar, omnichord
Cyril Neville - percussion
Alton Rubin, Jr. - scrub board
Mason Ruffner - guitar
Brian Stoltz - guitar
Paul Synegal - guitar
Recorded in Early 1989.