山下洋輔 / Hot Menu

果たして、山下トリオはニューヨークで受け入れられたのか?このアルバムを聴く限りでは、ブーイングもなければ、熱狂的な拍手もなかったように思える。「こんな演奏をピアノ、ドラム、サックスのトリオでするなんて凄いぞ!でも、何の曲なんだ?」というのが、ライブを聴きに来た人の感想だったのではないだろうか。日本人なら、「うさぎのダンス」や「砂山」をモチーフにした構成ということで、ヤマト魂ならぬヤマシタ魂を素直に感じるのだが。

ヨーロッパで絶賛された山下トリオは、アメリカ・ニューヨークでも通じるのかという問いに答える企画であったと思うが、結果は不戦敗。いや、不戦勝であったかもしれない。つまり、彼らが戦う土俵、もしくは四角いリングが用意されていなかったということだ。ニューヨークにおいては、時代を先取りし過ぎたのかも知れない。調べた資料によると、このライブ録音の後、スタジオ録音は多数あるものの10年近くはニューヨークでライブ活動はしていない。ダンスを踊ったウサギは月に帰るしかなかったのか。

1. Introduction - Rabbit Dance (Usagi no Dance)
2. Mina's Second Theme
3. Sunayama

Yosuke Yamashita / 山下洋輔 - piano
Akira Sakata / 坂田明 - alto saxophone, alto clarinet
Shota Koyama / 小山彰太 - drums

Recorded on June 29, 1979 at JAZZ AT THE SYMPHONY, held as part of Newport Jazz Festival, NYC.

山下洋輔 / First Time

1979年6月29日、山下トリオはニューポート・ジャズ・フェスティバルに初出演。その模様がアルバムHot Menuに収録された。それに先立って、AEOC(アート・アンサンブル・オブ・シカゴ)の主要メンバー〈Joseph Jarman(ジョセフ・ジャーマン)、Malachi Favors Maghostus(マラカイ・フェイヴァース)、Famoudou Don Moye(ドン・モイエ)〉と、ヨースケがスタジオ録音したのが本作First Timeである。

全曲がヨースケの作品であり、3人の共演者の頭文字からFor D, For M, For Jと曲名がついた。岩浪洋三氏によるライナーノーツではこう書かれている(1979年9月付け)。「山下洋輔はこのセッションには大変満足だったという。ニューヨークも黒人ジャズメンとの共演もみんなはじめてだったので、アルバムタイトルは〈ファースト・タイム〉とつけられた」。AEOCの3人も日本のジャズ、そしてヨースケのジャズに爽快感を得たのではないだろか。問題は1つ。Hot MenuはCD化されたが、First Timeは未だにCD化されていない。権利交渉が面倒なのだろうか。

1. For D
2. For M
3. For J
4. Thus We Met
5. Cymbal Bird

山下洋輔 - piano
Joseph Jarman - alto saxophone, flute
Malachi Favors Maghostus - bass
Famoudou Don Moye - drums, cymbals, gongs, percussion

Recorded on June 26 & 27, 1979 at Generation Sound Studio, NYC.

山下洋輔 / Invitation

ピアノソロ・ライブである。ギャラリーを会場としたライブ録音。本アルバムの商品紹介には、「画家、谷川晃一の個展とのコラボレーション」とある。ところが、ジャケット裏面の英文ライナーノーツに、次の一文を発見。by a coincidence, an exhibition was being held there by Japan's pioneer of "art pop" namely KOICHI TANIKAWA.(偶然にも、日本の「アートポップ」のパイオニアである谷川晃一による展覧会が東京で開催されていた)。コラボレーションは間違いではないが、事前に企画されたものではない。

話は変わるが、セシル・テイラーの1981年のピアノソロ・ライブGardenには失望した。テイラーのソロは、演じる側と聴く側に一つの境界が存在する。一方の洋輔のソロは、聴く側を包み込む、ないしは引きずり込む印象を受ける。芸術と演芸の違いとも言えるかも知れない。なお、本作は完成度の高いアルバムなのだが、CD化はされていない。

1. Green Sleeves
2. On The Road
3. Mokujiki - 木喰
4. Let's Cool One
5. I Can't Get Started
6. A Night In Tunisia
7. Prelude To A Kiss

山下洋輔 - piano

録音 1979年2月22日 / 東京・フジテレビ・ギャラリー