吉田拓郎 / 176.5

「落葉」で始まり「祭りのあと」で閉めているアルバム。残りの9曲は、その後のライブなどでは唄われていない。「俺を許してくれ」のみが、アルバム「18時開演」で再演。アルバムタイトルは、拓郎の身長。どうにもこうにも拓郎らしい曲作りができなかった時代。

考えようによっては、1980年終わりは「主題」がなかった時代でもある。フォークというジャンルから出てきたアーティストは、迷走せざるを得なかった。なので、「落葉」で始まり「祭りのあと」で閉めるしかなかったのだろう。それでも、アルバムを出さなければならないという、ある意味での悲しさ。ジャケットの拓郎の表情がそれを物語っている。

1. 落陽
2. 星の鈴
3. 車を降りた瞬間から
4. 俺を許してくれ
5. 30年前のフィクション
6. しのび逢い
7. 妄想
8. 憂鬱な夜の殺し方
9. 光る石
10. はからずも、あ
11. 祭りのあと

発売 1990年1月10日

吉田拓郎 / ひまわり

全曲が拓郎の作詞作曲。残念ながら、決め手となる曲はない。唯一が「シンシア」。差別用語が含まれていると指摘され生産中止となったアルバム『今はまだ人生を語らず』に収録されていた「シンシア」が、このアルバムで復活。前作では、かまやつひろしとのデュオであったが、ここでは拓郎一人で歌っている。この一曲に価値があるアルバム。

1. ひまわり
2. 約束 ~永遠の地にて~
3. 遠い夜
4. その人は坂を降りて
5. 楽園
6. 冬の雨
7. シンシア '89
8. 帰路

発売 1989年2月8日

吉田拓郎 / MUCH BETTER

正直に言えば、80年代後半から90年代にかけての拓郎を聴くのは辛い。唄うべき焦点が定まらない拓郎。歌詞が軽くて、自分自身が拓郎を聴かなくなった時期と重なる。MUCH BETTERでは、拓郎と共に歩んできたファンにとっては、かなり物足りなかったはずだ。逆に、拓郎にとってみれば、もう好きにさせてくれという心境だったのだろう。泉谷しげるの「眠れない夜」までカバーしてしまった。

ところが、商品説明はこんな感じ。「これはいい。吉田拓郎の80年代を代表するアルバムになりそうだ。彼のボーカルには、以前ほどの力強さ、きき手をねじ伏せる迫力はないが、幾分の脆ささえも歌の説得力を深めている。サラリとした歌いっぷりと、音楽的バラエティとの関係も申し分ない」。だったら、何でMUCH BETTERだったのかの説明が欲しい。

1. 「うの」ひと夏 by 高杉
2. 眠れない夜
3. 気がついたら春は
4. 流れ流され
5. よせばいい
6. MR.K
7. すなおになれば
8. いくつもの夜が
9. 現在の現在(いまのいま)

発売 1988年4月21日