渡辺貞夫 / Round Trip

渡辺貞夫37歳の録音。参加メンバーが、チック・コリア、ミロスラフ・ヴィトウス、ジャック・ディジョネットという布陣。失敗作。米国の第一線のプレイヤーとの他流試合であるが、ナベサダが描いていた曲想とは、遠くかけ離れたものになってしまったと思う。

限られた時間で録音を終えなければならない。ナベサダがリーダーシップを発揮できたとして、時間との勝負だったのではないだろうか。名曲「パストラル」が、全く統一感がない。ナベサダの失敗ではなく、企画した事務所の失敗。

1. Round Trip: Going and Coming
2. Nostalgia
3. Pastoral
4. Sao Paulo

Sadao Watanabe - soprano saxophone, flute
Chick Corea - piano, electric piano
Miroslav Vitous - bass
Jack DeJohnette - drums
Ulpio Minucci - piano (track 4)

Recorded on July 15, 1970 at Allegro Sound Studio, NYC.

渡辺貞夫 / Pastoral

1970年代を前にして、ナベサダが「日本のジャズ」の一つの方向性を示したアルバム。当時としては決して珍しくはないのだが、メンバーは全員日本人。ナベサダを中心にして、ジャパン・ジャズの水準の高さを示したアルバムではある。だがそこに、次の時代への示唆があったかというと、結果「ポップ」だったと言われても仕方がなかった。

50年以上経った今だから言えるのだろう。ナベサダが作り上げたスコアにメンバーは縛られてしまった感じで、刺激も緊張感もない。名曲「パストラル」を名盤「パストラル」にできなかったアルバム。

1. Pastoral
2. Bridge
3. Tokyo Suite: Sunrise / Sunset
4. Gary, Outro Samba
5. Someday In Suburbs
6. Fandango
7. Closing Theme From "Kin-Kira-Kin"
8. Ritmo Saboroso

渡辺貞夫 - alto saxophone, sopranino, flute
田中正大 - French horn
松原千代繁 - French horn
松本浩 - vibraphone
増尾好秋 - guitar
八城一夫 - electric piano
鈴木良雄 - acoustic bass, electric bass, piano
渡辺文男 - drums, percussion

Tracks 1, 2, 5, 6 & 8
Recorded on July 8, 1969 at Toshi Center Hall, Akasaka, Tokyo.

Tracks 3, 4 & 7
Recorded on June 24, 1969 at Toshi Center Hall, Akasaka, Tokyo.

渡辺貞夫 / Iberian Waltz

中古紙ジャケCDが手元に届いて目を疑った。LPより曲数が少ない、しかも曲目が異なる。ただしジャケットは全く同じ。LPとCDのライナーノーツを読み比べながら、状況が見えて来た。所有していたLPはオリジナル盤ではなかったのだ。このアルバムは、スイングジャーナル主催ジャズ・ディスク大賞「日本ジャズ賞」を受賞。来日していたチャーリー・マリアーノは、1968年1月16日の授賞式に渡辺貞夫と出席。同月21日に受賞記念のセッションを行なった。ドラマーが富樫雅彦から渡辺文男に交代したが、他のメンバーは同じ。LPのB面がこのセッションに入れ替えられ、再発されたことになる。LPのライナーノーツを担当した油井正一氏は、このことに一切触れていない(1974年8月付け)。これは手抜きだ。そして、CD化に際しては、本来のアルバムに受賞記念セッションを加えるべきだった。

1965年11月にバークリー音楽院から帰国し、約1年半後に録音されたアルバム。自信をつけたナベサダと、これからの自分のジャズに一種の迷いがあるナベサダが交錯している感じだ。自分のジャズではなく、今求められているジャズを演じるナベサダがここにいる。ここが、ナベサダとしての本当の意味での出発点になったのだと思う。

CD
1. Iberian Waltz
2. I Thought About You
3. Stone Garden Of Ryoanji
4. God Has Mercy

LP
1. Iberian Waltz
2. I Thought About You
3. Palisades
4. Lament
5. You Are My Heart's Delight

CD: All Tracks, LP: Tracks 1 & 2
渡辺貞夫 - alto saxophone (except track 2), flute (track 3), indian-flute (track 4)
Charlie Mariano - alto saxophone, nagasvaram (track 4)
菊地雅章 - piano
原田政長 - bass
富樫雅彦 - drums
Recorded on June 28, 1967 at Teichiku Kaikan Studio, Tokyo.

LP: Tracks 3, 4 & 5
渡辺貞夫 - alto saxophone
Charlie Mariano - alto saxophone (except track 3)
菊地雅章 - piano
原田政長 - bass
渡辺文男 - drums
Recorded on January 21, 1968 at Teichiku Kaikan Studio, Tokyo.