富樫雅彦 / Valencia

富樫と加古のデュオ。非常に高いに緊張感が漂い、いわゆるインタープレイなどと言う言葉では片づけられない。太鼓から発せられる一つのパルス、ピアノの鍵盤から弾かれる一音。もし、この録音に立ち会っていたら、自分は凍り付いていたのではないだろうか。二人は一瞬の隙を見せないし、聴き手に一瞬の隙も与えてくれない。

ラスト曲、加古の作品によるSpring Will Comeで、ようやく聴き手を解放してくれる。「自分たちのジャズを最後まで聞いてくれてありがとう」というメッセージのようにも思えてくる。

1. Valencia
2. How Are You
3. Snow Night
4. Blast
5. Spring Will Come

加古隆 - piano
富樫雅彦 - percussion

録音 1980年1月22, 23日 / 東京音響ハウス

富樫雅彦 / Session In Paris Vol.2

1980年2月16日付けのライナーノーツで、悠雅彦氏がこう書いている。『性格のやや異なったこの第1集、第2集のパリ・セッションを通して、ぼくはあらためて富樫の音楽の大きさ、ヒューマンな豊かさ、真にスピリチュアルな境地を開拓したパーカッション技法の素晴らしさに目を見張らされる思いだった』。ちなみに、第1集と第2集のサブタイトルは、それぞれ「Song of Soil(大地のうた)」、「Color of Dream(彩られた夢)」と付けられている。富樫にとって、パリでの録音は大きな挑戦であったのだろう。

プロデューサー高和元彦氏による録音スタジオの解説。『パリ第5区のサンジェルマン大通りとソルボンヌ大学の中間にある「ラムゼス/ステュディオ・デュ・ヴィラージュ」であり、おそらく200年は経つと思われる古い建物の地下2枚にある石壁に囲まれた小部屋であった。およそスタジオのイメージとはかけはられたこの地下室は、多分酒倉か何かだったのだろう。その石壁にはカーテンや板などを一部にはって吸音はしているが、部分的に露出している石壁は個々の楽器に響きを与え、近代的なスタジオとは違った音色上の魅力が生まれている』。ジャケット裏には、セッションの写真があり、このスタジオを想像しながら聴くとColor of Dreamのイメージが湧いてくる。

1. Crystal
2. Orange
3. Acting
4. Snow
5. Reve Merveilleux
6. Ballad

Albert Mangelsdorff - trombone
加古隆 - piano
Jenny Clark - bass
富樫雅彦 - percussion

Recorded on July 17 & 18, 1979 at Ramses, Studio Du Village, Paris.

富樫雅彦 / Session In Paris Vol.1

LPのライナーノーツは野口久光氏。野口氏のキャッチコピーは、「わがジャズ界の至宝、富樫雅彦がパリ滞在2ヵ月、旧友ドン・チェリー、ベースの鬼才、チャーリー・ヘイデンとのトリオで吹き込んだ快心作!」。その通りだと思う。これ以上にプレイヤーや楽器を増やしても、それはノイズとなる危険性があった。最小メンバーで最大限の可能性を引き出したアルバムだろう。

もちろん、富樫を軸に聴いてもいいし、繰り返し聴いてチェリーやヘイデンを軸に聴くもよし。3者が枠にとらわれず演奏しているので、聴き手のスタイルも自由である。このアルバムの真髄はその点にある。そして、ここでの登場人物はみなすでに他界してしまっているのだ。合掌。
・野口久光:1994年6月13日没(84歳)
・ドン・チェリー:1995年10月19日没(58歳)
・富樫雅彦:2007年8月22日没(67歳)
・チャーリー・ヘイデン:2014年7月11日没(76歳)

1. June
2. Words Of Wind - Part I
3. Oasis
4. Song Of Soil
5. Words Of Wind - Part II
6. Rain

Don Cherry - trumpet, cornet, bamboo flute, percussion
Charlie Haden - bass
富樫雅彦 - percussion

Recorded on July 12 & 13, 1979 at Ramses, Studio Du Village, Paris.