『兆(きざし)』。1980年の当時、富樫と山下がデュオで演奏するなんて考えられなかった。大きな枠では言えば、もちろんどちらもジャズ。すなわち即興演奏。しかし、簡潔に言えば「緊張感の富樫」と「スピード感の山下」では、接点を見いだすのは極めて難しい。それを仕掛けたのはスイングジャーナル元編集長の児山紀芳氏(2019年2月3日死去、82歳)。
このアルバムは、それぞれが相手の得意技を引き出そうと前に出たり後ろに下がったりして、不均衡の調和を見出している。この「不均衡の調和」こそが、ジャズの醍醐味かもしれない。それは、それぞれの曲の中で、一瞬にして現れ、一瞬にして消えていく。
1. Action
2. May Green
3. Nostalgia
4. Feelin' Spring
5. Duo Dance
6. We Now Singing
山下洋輔 - piano
富樫雅彦 - percussion
録音 1980年4月15, 16, 17日 / 東京音響ハウス