富樫雅彦 / A Day Of The Sun

富樫雅彦と鈴木勲のデュオ。ただし、多重録音を用いているので、パーカッションとベースだけの単調な構成にはなっていない。LPのライナーノーツでの二人の対談からは、相当な準備をしてアルバム制作に臨んだことがよく分かる。その成果が十二分に発揮されている。LPを購入した時点でのアルバムは「日本ジャズ大賞」の受賞は決まっていなかった。以下は、CDの帯から。

『傑出した音楽性と独創性を誇る富樫雅彦と鈴木勲によるデュオ。このアルバムのために互いに3つずつ曲を用意し、緻密な打ち合わせの後に3日間のスタジオセッションで即興的に発展させ、各楽器パートを多重録音。互いのイマジネーションと演奏に触発された音楽家ふたり、そしてキングの録音技術が作り上げた至高の芸術。スイングジャーナル誌の1979年度「ジャズ・ディスク大賞」で「日本ジャズ大賞」と「録音賞」をダブル受賞』。つまり、富樫&鈴木による単なるデュオ演奏ではなく、二人で築いた作品。瞬間の「音」ではなく、積み重ねる「音」で勝負したアルバム。これもジャズか。

1. 陽光 - A Day Of The Aun
2. 東洋の黄色いたまご - Birth Of Yellow Eggs
3. ロンリー・ブルー - Lonely Blue
4. 深海生物の歌 - Creatures In The Deep Blue Sea
5. シルヴァリー・フラッシュ - Silvery Flash
6. 芽ばえ - Awakening Of The Fresh Green

鈴木勲 - double-bass, piccolo-bass, 8 strings 'cello, acoustic piano, solina, bells, marimba, maracas
富樫雅彦 - snare drum, tom tom set, melody tom set, bass drum, cymbals, bells, gong, cow-bells, synthesizer, solina

Recorded on February 1, 2 & 3, 1979 at King Records, Studio 2, Tokyo.

富樫雅彦 / Guild For Human Music

このアルバムから一年前の1975年4月に録音されたアルバムSpiritual Natureとほぼ同じ参加メンバー。しかし、イメージはだいぶ異なる。タイトルから分かるように、今回は「人」を、一年前は「自然」を対象にしたからなのだろう。「静」と「動」という感じでもある。もしくは「暗」と「明」。ジャケットを見比べても一目瞭然。

演奏が進んでいっても、決して外へ広がるエネルギーを感じさせず、むしろ凝縮していく。全6曲に4日間を掛け、スタジオ録音で完成させたことに驚く。緊張感がよく続いたものだ。で、結局のところ、富樫が、このアルバムで表現したかったものは何だったのだろうか。曲名は番号が付されているだけで、明確なコンセプトが感じられない。なお、オンデマンドCDとして一時期発売されていたようだが、今は廃盤状態。

1. First Expression
2. Second Expression
3. Third Expression
4. Fourth Expression
5. Fifth Expression
6. Sixth Expression

鈴木重男 - woodwinds
宮田英夫 - woodwinds
中川昌三 - woodwinds
佐藤允彦 - keyboard
翠川敬基 - cello, bass
池田芳夫 - bass
富樫雅彦 - percussion
豊住芳三郎 - percussion
横山達治 - percussion

Recorded on May 23, 24, 26 & 27, 1976 at Nippon Columbia's 1st studio, Tokyo.

富樫雅彦 / Story Of Wind Behind Left

ジャズという概念を超えてしまった富樫。緊張感とかビートとかではなく「鼓動」とでも呼びたい。このアルバムの中心は、言うまでもなく打楽器パーカッション。それに弦楽器のベースとセロが絡んでくる。さらに、ソプラノサックスが場に変化を与える。限られた楽器構成で、曲名を想起させるようなストリーが進行していく感じだ。それは、5人の「鼓動」によるもの。

ジャケットには英語のタイトルが記されているが、ライナーノーツにはタイトルを『風の遺した物語』としてある。そして、富樫の作品であるすべての収録曲は、日本語と英語の曲目が併記。日本語のタイトルが先にあり、海外でも通じるための英語の記載だったのだろう。一時期、本作はオンデマンドでCD-Rを発売していたようだが、そのサービスは終わっていて、完全に廃盤状態。風は音源を遺してくれなかった。そして、このアルバムを創り上げた5人のうち、2人はすでに他界。ライナーノーツを担当した3人も他界してしまった。

高木元輝 - 2002.12.11 (aged 63) / 富樫雅彦 - 2007.8.22 (aged 67)
野口久光 - 1994.6.13 (aged 84) / 清水俊彦 - 2007.5.21 (aged 78) / 内田修 - 2016.12.11 (aged 87)

1. 風の来る予感 - Premonition Of Wind's Coming
2. さらなる出会い - Revnion
3. それから - And Then
4. 身の上話 - Life Story Of Wind
5. 通りすぎてゆくもの - Those Passing Things
6. そしてまた来るもの - Things Will Come Again

富樫雅彦 - percussion (tracks 1-5), bells (track 6)
高木元輝 - percussion (tracks 1,4,6), soprano saxophone (tracks 2,5)
豊住芳三郎 - percussion (tracks 1-5), tom tom (track 6)
池田芳夫 - bass (tracks 1-3)
翠川敬基 - bass (track 5), cello (tracks 1-4,6)

Recorded on September 2, 3 & 5, 1975.