富樫雅彦 / Session In Paris Vol.1

LPのライナーノーツは野口久光氏。野口氏のキャッチコピーは、「わがジャズ界の至宝、富樫雅彦がパリ滞在2ヵ月、旧友ドン・チェリー、ベースの鬼才、チャーリー・ヘイデンとのトリオで吹き込んだ快心作!」。その通りだと思う。これ以上にプレイヤーや楽器を増やしても、それはノイズとなる危険性があった。最小メンバーで最大限の可能性を引き出したアルバムだろう。

もちろん、富樫を軸に聴いてもいいし、繰り返し聴いてチェリーやヘイデンを軸に聴くもよし。3者が枠にとらわれず演奏しているので、聴き手のスタイルも自由である。このアルバムの真髄はその点にある。そして、ここでの登場人物はみなすでに他界してしまっているのだ。合掌。
・野口久光:1994年6月13日没(84歳)
・ドン・チェリー:1995年10月19日没(58歳)
・富樫雅彦:2007年8月22日没(67歳)
・チャーリー・ヘイデン:2014年7月11日没(76歳)

1. June
2. Words Of Wind - Part I
3. Oasis
4. Song Of Soil
5. Words Of Wind - Part II
6. Rain

Don Cherry - trumpet, cornet, bamboo flute, percussion
Charlie Haden - bass
富樫雅彦 - percussion

Recorded on July 12 & 13, 1979 at Ramses, Studio Du Village, Paris.

富樫雅彦 / A Day Of The Sun

富樫雅彦と鈴木勲のデュオ。ただし、多重録音を用いているので、パーカッションとベースだけの単調な構成にはなっていない。LPのライナーノーツでの二人の対談からは、相当な準備をしてアルバム制作に臨んだことがよく分かる。その成果が十二分に発揮されている。LPを購入した時点でのアルバムは「日本ジャズ大賞」の受賞は決まっていなかった。以下は、CDの帯から。

『傑出した音楽性と独創性を誇る富樫雅彦と鈴木勲によるデュオ。このアルバムのために互いに3つずつ曲を用意し、緻密な打ち合わせの後に3日間のスタジオセッションで即興的に発展させ、各楽器パートを多重録音。互いのイマジネーションと演奏に触発された音楽家ふたり、そしてキングの録音技術が作り上げた至高の芸術。スイングジャーナル誌の1979年度「ジャズ・ディスク大賞」で「日本ジャズ大賞」と「録音賞」をダブル受賞』。つまり、富樫&鈴木による単なるデュオ演奏ではなく、二人で築いた作品。瞬間の「音」ではなく、積み重ねる「音」で勝負したアルバム。これもジャズか。

1. 陽光 - A Day Of The Aun
2. 東洋の黄色いたまご - Birth Of Yellow Eggs
3. ロンリー・ブルー - Lonely Blue
4. 深海生物の歌 - Creatures In The Deep Blue Sea
5. シルヴァリー・フラッシュ - Silvery Flash
6. 芽ばえ - Awakening Of The Fresh Green

鈴木勲 - double-bass, piccolo-bass, 8 strings 'cello, acoustic piano, solina, bells, marimba, maracas
富樫雅彦 - snare drum, tom tom set, melody tom set, bass drum, cymbals, bells, gong, cow-bells, synthesizer, solina

Recorded on February 1, 2 & 3, 1979 at King Records, Studio 2, Tokyo.

富樫雅彦 / Guild For Human Music

このアルバムから一年前の1975年4月に録音されたアルバムSpiritual Natureとほぼ同じ参加メンバー。しかし、イメージはだいぶ異なる。タイトルから分かるように、今回は「人」を、一年前は「自然」を対象にしたからなのだろう。「静」と「動」という感じでもある。もしくは「暗」と「明」。ジャケットを見比べても一目瞭然。

演奏が進んでいっても、決して外へ広がるエネルギーを感じさせず、むしろ凝縮していく。全6曲に4日間を掛け、スタジオ録音で完成させたことに驚く。緊張感がよく続いたものだ。で、結局のところ、富樫が、このアルバムで表現したかったものは何だったのだろうか。曲名は番号が付されているだけで、明確なコンセプトが感じられない。なお、オンデマンドCDとして一時期発売されていたようだが、今は廃盤状態。

1. First Expression
2. Second Expression
3. Third Expression
4. Fourth Expression
5. Fifth Expression
6. Sixth Expression

鈴木重男 - woodwinds
宮田英夫 - woodwinds
中川昌三 - woodwinds
佐藤允彦 - keyboard
翠川敬基 - cello, bass
池田芳夫 - bass
富樫雅彦 - percussion
豊住芳三郎 - percussion
横山達治 - percussion

Recorded on May 23, 24, 26 & 27, 1976 at Nippon Columbia's 1st studio, Tokyo.