Stanley Turrentine / Common Touch

ブルーノートの創立85周年を記念した、日本独自企画の最新リイシュー・シリーズ。そのカタログを閲覧したら、次のような商品解説。『スタンリー・タレンタイン&シャーリー・スコット夫妻が、息の合ったハーモニーを聴かせる60年代後半の快作。ボブ・ディランの「風に吹かれて」のカヴァーに注目。豪快なトーンでテーマをブロウするタレンタインに、シンプルかつ軽快なスコットのオルガンが好ましく絡む。ファンキーな「バスター・ブラウン」もオススメ』。

所有するアルバムの中で、ジャズ畑へ持ち込まれたディランの作品は、キース・ジャレットのMy Back Pages、チャールス・ロイドのMasters Of Warのみだった。まさか、タレンタインがBlowin' In the Windを演奏するなどとは想像もしなかった。本作を迷わず購入して、さっそく聴いてみると、原曲をそのままブルージーな感じに仕上げているだけ。ちっとも「風に吹かれてイナイ」。

1. Buster Brown
2. Blowin' In the Wind
3. Lonely Avenue
4. Boogaloo
5. Common Touch
6. Living Through It All

Stanley Turrentine - tenor saxophone
Shirley Scott - organ
Jimmy Ponder - guitar
Bob Cranshaw - electric bass
Leo Morris - drums

Recorded on August 30, 1968 at Ruby Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Sonny Rollins / G-Man

1986年8月16日、ニューヨークにある彫刻公園Opus 40での野外ライブアルバム。タイトルは1曲目のG-Manを採用。邦題は「Gマン」ではなく、なぜか「Gメン」としている。というか、邦題になっていない。ロリンズ作のこのタイトルは一般的なGovernment Manのことだろうか。それともGreat Manかもしれない。だったら、ロリンズのサックスを形容して、邦題は「豪快野郎」で決まり!

まぁ、邦題はどうでも良いのだが、2曲目のKimにおいて、翌87年4月9日にスタジオでテナーサックスをオーバーダブしているのが気になる。ジャケット内の録音データには、しっかりと記載されているのだ。だが、ライナーノーツを担当した小川隆夫氏は、そのことには一切触れていない。ロリンズは何が不満だったのだろう。アルバム全体としては、ロリンズのブロウをたっぷりと堪能できるので、そんな小細工はして欲しくなかった。

1. G-Man
2. Kim
3. Don't Stop The Carnival
4. Tenor Madness

Sonny Rollins - tenor saxophone
Clifton Anderson - trombone
Mark Soskin - piano
Bob Cranshaw - electric bass
Marvin "Smitty" Smith - drums

Recorded on August 16, 1986 at "Opus 40" in Saugerties, New York.
Track 2: additional recording - tenor saxophone overdubs on April 9, 1987 at Manhattan Recording Studios, NYC.

清水俊彦 / ジャズ転生

1987年8月30日発行 晶文社 定価2370円。243ページ。清水俊彦氏の著書は2冊所有している。1981年4月発行の『ジャズ・ノート』と本書。前者はあまりにも難解で、読者へ語り掛けるような文章ではなかった。しかし、本書は雑誌『ジャズ・ライフ』と『海』を中心にしたコラム、そして新たに書き下ろしたエッセイ集めたもので、読みやすくなっている。だが、本書に取り上げたミュージシャンに対して、清水氏はインタビューを行っていない。一部にコンサート評があるものの、彼の根源的な弱さがそこにある。彼の言葉が躍動していない理由だ。

第1章
・ミルフォード・グレイヴスが語りかけるもの
・デレク・ベイリー ― 新しい即興言語の開拓者
・アンソニー・デイビスの『エピステーメー』
・ビリー・バングとアンソニー・デイビスの冒険的で挑戦的な新作
・ワールド・サキソフォン・クヮルテットの『レヴュー』
・AMMは音を媒介にして探究を行なう
・セシル・テイラーのスタイルの内的統一性について
・『ソングス』は詩とジャズの挑発的な結合として注目に値する
・チック・コリアによるトリオの新しい建築学のエッセンス
・富樫雅彦と高柳昌行のフリー・インプロビゼーション
・黒人音楽が生きた実体であることをレスター・ボウイは喚起する
・ロナルド・ジャクソンがデコーディング・ソサエティを組織した
・スティーヴ・レイシー・セヴンの『プロスペクタス』
・ザ・ゴールデン・パロミノスとその広がりを垣間見る
・『ザ・ゴールデン・パロミノス』のもう一つの見方
・スペシャル・エディションの聴きかた
・ジャズは伝統へスイング・バックする ― デヴィッド・マレイの場合
第2章
・マイルス・デイビスの変化への耽溺とファンクについて
第3章
・ジョン・ゾーン ― ポスト・モダンの音楽の建築家
・エンニオ・モリコーネの作品を変質させたジョン・ゾーンの新作
・ハル・ウィルナーの制作した『アマルコルド ニーノ・ロータ』
・ゲイリー・ギディンズの『リズマニング』を読む
・ベルギーの異端的なピアニスト、フレッド・ヴァン・ホーフ
・キップ・ハンラハンと『デザイアー・デヴェロップス・アン・エッジ』
・ドン・ピューレンを三つのコンテキストのなかで聴く
・即興の哲学に向けて
・ウィントン・マーサリスと『ブラック・コーズ』について
・独創的なフルート奏者ジェームズ・ニュートンの二作
・ブルースの成行き ― ウォーレスとヘンフィルの場合
・マイルスの器楽的スリラー『ユウ・アー・アンダー・アレスト』
・マイルス・デイビスのコンサートについて
第4章
・キース・ジャレットあるいは役者の影のミュージシャン
第5章
・オーネット・コールマンとプライム・タイムについて
・ブッチ・モリスと彼の〈コンダクション〉
・ラスト・イグジットと『ラスト・イグジット』
・ディアマンダ・ギャラス ― 神秘的なアウトロー
・ザ・ヴィエナ・アート・オーケストラの『エリック・サティのミニマリズム』
・スティーヴ・レイシーのソロ・アルバム『ザ・キス』
・チコ・フリーマン、ウィントン・マーサリス、デヴィッド・マレイ
・ヘンリー・スレッギル・セクステットのアルバムを聴こう
・ノスタルジックなカーラと突飛な領域にまで踏み込んだカーラ
・パット・メセニーの音楽の全領域を収めた二枚のアルバム
・パット・メセニーとオーネット・コールマンの『ソングX』