Miles Davis / The Modern Jazz Giants

1954年クリスマスセッション。Bags Grooveのみが、そのタイトルアルバムに収録され、残りのセッションが本作へ。発売が遅れたのは、曲数が足りなかったのだろう。56年10月26日のマラソンセッションから'Round Midnightが選ばれ収録。Prestige 7000 seriesのマイルス名義のアルバムは次の通り。Relaxin'の後に本アルバムが発売されている。「Walkin' - 7076, Cookin' - 7094, Bags Groove - 7109, Relaxin' - 7129, The Modern Jazz Giants - 7150, Workin' - 7166, Steamin' - 7200」。以下はマイル自叙伝①から。喧嘩セッションなどと言われているので、長文ながら掲載する。

「この日、モンクとオレの間にあったとされるいさかいについて、たくさんの誤解がまかり通っている。だが、その噂は、ほとんど意味のないことが真実になってしまうまで、勝手に繰り返し語られつづけたものにすぎない。あの日の真実は、オレ達全員がすばらしい演奏をしたという、ただそれだけだ。まあ、オレとモンクの間にあったことを、一度きっぱり明らかにしておこう。

オレはただ、モンクが作った”ベムシャ・スイング”以外では、オレのソロのバックでピアノを弾くな、休んでろ、と言っただけだ。理由は、ホーン・プレイヤーのバックでの演奏について、モンクがあまり理解していなかったからだ。モンクと一緒にやって良いサウンドを作れたのは。ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、チャーリー・ラウズだけだ。みんなサックス・プレイヤーだ。オレの意見だが、モンクはたいていのホーン・プレイヤー、特にトランペットとの演奏は得意じゃなかった。トランペットは、演奏できる音符の数が限られている。だからリズムセクションには、目一杯演奏させなきゃならない。だがモンクのやり方は、それとは正反対だった。トランペッターは、リズム・セクションがホットじゃないとダメなんだ。たとえバラッドを吹いていてもだ。あの追い立てるような感じが必要なんだが、そいつはモンクのスタイルじゃなかった。〈中略〉

あのレコーディングでのモンクは、オレが期待したとおりに自然で、とても良く聞こえる。オレがこう演じて欲しいと言ったものが、彼がやろうとしていたことでもあったわけだ。オレが吹き終わって少し経ってから演奏に入ってきてくれと、最初に言ったとおりに、モンクはやっただけだ。なんの口論もなかったし、なぜオレとモンクがケンカしたという話になったか、まったくわからないな」。

1. The Man I Love [take 2]
2. Swing Spring
3. 'Round Midnight
4. Bemsha Swing
5. The Man I Love [take 1]

Tracks 1, 2, 4 & 5
Miles Davis - trumpet
Milt Jackson - vibraphone
Thelonious Monk - piano
Percy Heath - bass
Kenny Clarke - drums
Recorded on December 24, 1954 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Track 3
Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums
Recorded on October 26, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Miles Davis / Bags' Groove

7曲中の2曲は別テイクだが、CDでのボーナストラックではない。1957年12月リリースの本作は、54年6月と12月の2回のセッションを収録。12月のセッションの多くは、59年5月リリースのアルバムThe Modern Jazz Giantsに収録され、録音から5年経って全てが公開されたことになる。プレスティッジというレーベルはジャズ界に大きな役割を果たしたが、リアルタイムで伝えて来なかった罪も大きい。

マイルス自叙伝①では、6月のセッションについてこう書いている。「ケニーを選んだのは、オレが求めていたサウンドに、アート・ブレイキーより細かい陰影をつけることができて、変化に富んだ演奏ができると思ったからだ」。「あのレコーディングの時ソニーは曲を用意してはいたが、実際はスタジオで全部書き直したんだ。〈中略〉すると奴はどこか隅のほうに行って、少し経つと紙切れに何か書いて戻ってきて、“OK、マイルスできたよ”と言うんだ。そんな調子で生まれた曲の一つがオレオだった。タイトルは、バターの安い代替品として大きな話題になっていた”オレオマーガリン”から取ったんだ」。Oleoの由来がマーガリンとは知らなかった。そして、ケニー・クラークの変化に富んだドラムを聴くべきアルバムであることが分かった。

1. Bags' Groove [take 1]
2. Bags' Groove [take 2]
3. Airegin
4. Oleo
5. But Not For Me [take 2]
6. Doxy
7. But Not For Me [take 1]

Tracks 1 & 2
Miles Davis - trumpet
Milt Jackson - vibraphone
Thelonious Monk - piano
Percy Heath - bass
Kenny Clarke - drums
Recorded on December 24, 1954 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Tracks 3 - 7
Miles Davis - trumpet
Sonny Rollins - tenor saxophone
Milt Jackson - vibraphone
Horace Silver - piano
Percy Heath - bass
Kenny Clarke - drums
Recorded on June 29, 1954 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Miles Davis / Walkin'

学生時代。当然ながら金はなく、ジャズの名盤を少しずつ買い集めながら、購入したアルバムを何度も繰り返し聴いていた。このアルバムもその一つで、一曲目のWalkin'に酔いしれた。ジャズ研での練習を終え、焼き鳥屋で安酒を飲んだ帰り、Walkin'の最初のフレーズ「タッターラァー・タッタッァ…」を口ずさみながらタイトルのようにウォーキングできるかという実験?をした。

結果は失敗。素直に両足が前へ進まない。マイルスは、この曲の演奏中はスタジオや舞台で歩いていない、というの結論に達したのだ。その時、(飲んで)歩くには3拍子がピタッと来ることをメンバーで発見。で、自分たちの次の課題曲はMy Favorite Thingsに決定。

ところで、本アルバム唯一の白人プレイヤーDavey Schildkraut(デイブ・シルドクラウト)の名前はジャケット表にはなぜか記載されていないが、ジャケット裏ではIra Gitler(アイラ・ギトラー)がornithologistと紹介している。鳥類学者、つまりチャーリー・パーカー派ということ。彼を含んだ1954年4月3日のセッションでは、このアルバム以外にI'll Remember Aprilも吹き込んでいて、それはアルバムBlue Hazeに収録されている。

1. Walkin'
2. Blue 'N' Boogie
3. Solar
4. You Don't Know What Love Is
5. Love Me Or Leave Me

Tracks 1 & 2
Miles Davis - trumpet
Lucky Thompson - tenor saxophone
J.J. Johnson - trombone
Horace Silver - piano
Percy Heath - bass
Kenny Clarke - drums
Recorded on April 29, 1954 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Tracks 3, 4 & 5
Miles Davis - trumpet
Davey Schildkraut - alto saxophone (except track 4)
Horace Silver - piano
Percy Heath - bass
Kenny Clarke - drums
Recorded on April 3, 1954 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.