このアルバムが録音されたのは、1955年8月。そして、10月からはオリジナル・クインテットとなるメンバー(Miles Davis, John Coltrane, Red Garland, Paul Chambers, Philly Joe Jones)で活動を開始した。つまり、マイルス自身がやりたかった音楽は、このアルバムにはない。ある程度の評価を受けているミュージシャンとではなく、自分が目指そうとする音楽を共に築いてくれる仲間が欲しかったのだろう。だからと言って、このアルバムでマイルスが手抜きをしている訳ではない。新たなるマイルストーンへ向けてひた走っている。
気になるのは、ジャッキー・マクリーンが2曲しか参加していないこと。答えはマイル自叙伝①にあった。『ジャッキーがハイになりすぎて、「吹けないよ」と騒いだのを憶えている。オレは頭にきて、その日以来、二度とジャッキーを使わなくなった。この日は、ジャッキーの〈ドクター・ジャックル〉と〈マイナー・マーチ〉を最初にレコーディングした。〈中略〉ジャッキーは相変わらずどっぷりヤクに浸っていた。それでも仲間には変わりがない奴を見つめて、「どうしたんだ、お前。小便でもしたいのか」と言うと、奴は怒り狂って、楽器をしまうとスタジオから出ていってしまった。だから奴は、あのレコードでは二曲しか入っていないんだ』。マイルスのディスコグラフィーを見ると、確かにこの日の録音以降、マクリーンは登場しない。
1. Dr. Jackle
2. Bitty Ditty
3. Minor March
4. Changes
Miles Davis - trumpet
Milt Jackson - vibraphone
Jackie McLean - alto saxophone (tracks 1,3)
Ray Bryant - piano
Percy Heath - bass
Arthur Taylor - drums
Recorded on August 5, 1955 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.