Miles Davis / E.S.P.

ウェイン・ショーターがマイルスグループに正式に参加してすぐに、ライブアルバムMiles In Berlinが1964年9月に録音された。しかし、真の意味での「黄金クインテット」のスタートは、65年1月録音のアルバムE.S.P.と言える。トニー・ウィリアムス以外のメンバーが、それぞれ作品を作って持ち寄っていることからも明らかである。

マイルスの変遷を辿る上で最重要アルバム。だが、ジャケットはクズとしか言いようがない。自分のカミさんの写真をジャケットに使うのは、百歩譲って許せる。しかし、なぜにツーショットなのだ。タイトルE.S.P.(Extra-Sensory Perception = 遠隔認知/透視)との関連性が全く無い。しかも、マイル自叙伝②には、以下のように書かれている。

「あの頃には、オレとフランシスの関係は最悪になっていた。理由の一つは、ツアーに長い間出て、家にいなかったことだ。〈中略〉フランシスは、友達と出かけたり、自分が興味あることをやりはじめたが、オレは文句をつけなかった。オレ達はもう、十分に結婚生活を楽しんでしまった後だったんだろう。E.S.Pというレコードのジャケットの、オレが庭で彼女を見上げている写真は、とうとう彼女が出ていってしまう一週間くらい前に撮ったものだ」。一週間後を透視していたということだろうか。

1. E.S.P.
2. Eighty-One
3. Little One
4. R.J.
5. Agitation
6. Iris
7. Mood

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - double bass
Tony Williams - drums

Recorded on January 20, 21 & 22, 1965 at Columbia Studios, Los Angeles, CA.

Miles Davis / Live in Copenhagen 1964

マイルスグループは1964年7月に来日し、9月から10月にかけてヨーロッパ遠征を果たしている。その中のコペンハーゲンでの演奏なのだが、そもそもアルバム制作を前提とした録音ではなかった模様。録音バランスはかなり悪い。なので、長い間お蔵入りしていて、2012年5月に正式にCD化された。

前作は9月25日録音のアルバムMiles In Berlinで、曲目はほぼ同様。それから9日後の録音が本作。たった9日間ではあるものの、ウェイン・ショーターのグループおける立ち位置が明確になった感じだ。ベルリンでは手探り感があったものの、このコペンハーゲンではしっかりと自己主張している。ジャズ、特にライブは場数を踏むことが大事なのだ。そのショーターがジャケットに写っていないのが残念。

1. Autumn Leaves
2. So What
3. Sttella By Starlight
4. Walkin'
5. All Of You
6. Joshua / The Theme

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on October 4, 1964 at KB Hallen, Copenhagen, Denmark.

Miles Davis / Miles In Berlin

マイルス自叙伝②には、1964年7月の日本公演からの帰国直後のことが書いてある。『ウェイン・ショーターがジャズ・メッセンジャーズを辞めたという、待ちに待った知らせが入ってきたのは、ロサンゼルスにいる時だった。〈中略〉ウェインには、オレ達全員からバンドへの参加を求める電話が殺到したはずだ。とうとう彼から電話がかかってきた時には、オレは「飛んでこい!」と叫んだ。間違いなく来るように、しかも恰好をつけて来れるようにと、ファーストクラスの切符を送ってやった。オレはそうまでしてウェインを入れたかったんだ』。

ウェイン・ショーターがマイルスグループに正式に参加し、最初のステージはロサンゼルスの「ハリウッド・ボウル」だったが、最初に録音された音源はこのアルバムである。ここに「黄金クインテット」が誕生した。しかし、演奏曲目は従来通りで、真の意味での「黄金」のスタートは、翌65年1月録音のアルバムE.S.P.と言えるだろう。

1. Milestones
2. Autumn Leaves
3. So What
4. Stella By Starlight
4. Walkin'
5. Go-Go [Theme And Announcement]

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - double bass
Tony Williams - drums

Recorded on September 25, 1964 at Philharmonie Hall, Berlin, Germany.