Miles Davis / Sorcerer

1967年5月の録音に、その5年前の62年8月録音のNothing Like Youを紛れ込ました。マイルスのアルバムの中で最大の失敗。というか、プロデューサーのテオ・マセロの仕業なのだろう。LPで言えば、B面の最終曲は2分弱であるものの、Bob Dorough(ボブ・ドロー)作のボーカル曲。ジャズ喫茶で本作のB面をリクエストしても、Nothing ... とドローが歌い始めるとマスターは針を上げたという伝説がある(らしい)。ウェイン・ショーターがマイルスとのセッションに参加して、最初に記録された演奏である。だとしても、マセロは何を伝えようとしたのか。

マイルス自叙伝②にその真相があるかと思ったが、マイルスはジャケットのことしか書いていない。Cicely Tyson(シシリー・タイソン)を使ったことで、オレ達が付き合っていることが周囲にわかってしまった、とだけ。ちなみに、二人は1981年に結婚。それよりも、最も重要なのはトニー・ウィリアムス作の2曲目Pee Weeにマイルスが参加していないこと。輸入盤CDのライナーノーツでは、理由不明となっている。せめて憶測でもいいから書いて欲しかった。マトリクス番号を確認すると、一連のセッションの中でPee Weeが最終録音。マイルスはセッションの成功をすでに確信したのだろう。オレはSorcerer(魔術師)なんだ。自分抜きでもメンバーの演奏に魔術をかけて最高なものにしてやるさ、と。

1. Prince Of Darkness
2. Pee Wee
3. Masqualero
4. The Sorcerer
5. Limbo
6. Vonetta
7. Nothing Like You
8. Masqualero [alternate take]
9. Limbo [alternate take]

Tracks 1 - 6, 8 & 9
Miles Davis - trumpet (except track 2)
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - double bass (except track 9)
Buster Williams - double bass (track 9)
Tony Williams - drums

Tracks 1 -6 & 8
Recorded on May 9, 16, 17 & 24, 1967 at Columbia 30th Street Studio B, NYC.
Track 9
Recorded on May 9, 1967 at Columbia Studio, Los Angeles.

Track 7
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Frank Rehak - trombone
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
William Correa - bongos
Bob Dorough - vocals
Gil Evans - arrangements
Recorded on August 21, 1962 at Columbia 30th Street Studio A, NYC.

Miles Davis / Miles Smiles

このアルバムで一番印象的なのは、5曲目のフリーダム・ジャズ・ダンス。曲が始まってもウェイン・ショーターが入ってこない。普通ならば録音中止で撮り直しである。さらに、マイルスとショーターによるテーマのユニゾンで、マイルスはメロディーを省略している。確かに難しい曲。学生時代、ウッドベースのソロでこの曲の練習を繰り返したが完成には至らず。マイルスも手抜きしたのだ。

マイルス自叙伝②では、本作については「このレコードじゃ、オレ達が一所懸命新しいことを求めて、手を伸ばしていることがわかるはずだ」という短い記載しかない。撮り直しを繰り返し、失敗のない演奏をアルバムに収録することは価値がない、とも受け取れる。失敗なんて笑って済ませる話だとも言っている気がする。だから、タイトルはMiles Smilesなのだ。

1. Orbits
2. Circle
3. Footprints
4. Dolores
5. Freedom Jazz Dance
6. Gingerbread Boy

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on October 24 & 25, 1966 at Columbia 30th Street Studios, NYC.

Miles Davis / At Plugged Nickel, Chicago Vol.1 & Vol.2

1965年12月のライブ演奏が、10年以上経った76年にVol.1とVol.2の2枚のLPに分かれ、日本で先行発売された。ジャケットのデザイナーには二人の日本人の名前(吉田修一氏と田島照久氏)がある。集積回路のデザイン。12ピンのIC。NAND回路だろうか?いや、OPアンプか?そして、プラグド・ニッケルと言うシカゴのジャズクラブ。ネットで調べると、このアルバムのことしか出てこない。店名を直訳すると「接続された(金属の)ニッケル」。意味不明だが、デザイナーはニッケルから集積回路を思い付き、プラグド(接続)からワイヤーを想像したのかもしれない。

2枚組としてCD化され音が良くなった分、録音の粗さが目立つ。ドラムは床を叩いているような音。それ以上に、ウェイン・ショーターのサックスに創造性が欠ける。65年4月にマイルスは骨の移植手術をしている。同年11月のビレッジ・バンガードでの演奏で再出発を果たした。このプラグド・ニッケルが12月なので、グループとしては十分な練習機会がなかったことがうかがえる。何度も演奏してきた曲目が並び、より自由なフォーマットになっているが、メンバーがうまくかみ合わない部分が多く見られる。プラグド・カケテル(接続不十分)なのだ。

Disc 1
1. Walkin'
2. Agitation
3. On Green Dolphin Street
4. So What / Theme

Disc 2
1. 'Round Midnight
2. Stella By Starlight
3. All Blues
4. Yesterdays / Theme

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on December 22 & 23, 1965 at Plugged Nickel, Chicago.