McCoy Tyner / Sahara

全曲マッコイの作品。マッコイの真骨頂は、横滑りのスピード。鍵盤を叩き続けないと納得しないのだろう。このメンバーは、そんなマッコイの演奏スタイルに見事にマッチしている。150キロの速球を持っているのに、110キロのカーブなんて投げなれない、という連中だ。キャッチャー(聴き手側)も、中途半端で構えていると痛い目に遭う。

マッコイが好きだった。過去形なのは、1978年3月録音のアルバムThe Greetingまでだったから。残念ながら、その後のアルバムは「マッコイ、どうしたんだ?」が続いてしまった。ジャズに限らず、芸術家は過去の自分の作品を否定して、次に進んでいくのだろう。コルトレーンには、その変曲点となったアルバムがいくつかある。マッコイはそれを提示できずに、時代をやり過ごしてしまったような気がしてならない。

1. Ebony Queen
2. A Prayer For My Family
3. Valley Of Life
4. Rebirth
5. Sahara

Sonny Fortune - alto saxophone (track 4), soprano saxophone (tracks 1,5), flute (tracks 3,5)
McCoy Tyner - piano, koto (track 3), percussion (track 5), flute (track 5)
Calvin Hill - bass, reeds (tracks 3,5), percussion (tracks 3,5)
Alphonse Mouzon - drums, trumpet (track 5), reeds (track 5), percussion (tracks 3,5)

Recorded in January 1972 at Decca Recording Studio, NYC.

McCoy Tyner / Asante

前作Extensionsに続いてアフリカ回帰を表現した1970年9月録音のアルバム。だが、どうも軸が定まっていない。マッコイなりのコンセプトがあったものの、収録された楽曲は不完全燃焼。つまり、いくつかの曲を温めてセッションに臨みアルバムにしたのではなく、アルバムを作るために曲を用意したという感じだ。

その準備不足を補うかのように、ジャケットはアフリカらしさを表現。CD化で3曲が追加され、その合計は40分近い。しかも、メンバーを大きく入れ替えての同日のセッション。このデータからも、マッコイには一つの迷いが生じてきた時期なのだろう。

1. Malika
2. Asante
3. Goin' Home
4. Fulfillment
5. Forbidden Land
6. Asian Lullaby
7. Hope

Andrew White - alto saxophone
Ted Dunbar - guitar
McCoy Tyner - piano, wooden flute
Buster Williams - bass
Billy Hart - drums, African percussion
Mtume - congas, percussion (tracks 2,3)
Songai Sandra Smith - vocals (tracks 1,2)

Tracks 1, 2, 3 & 4
Andrew White - alto saxophone
Ted Dunbar - guitar
McCoy Tyner - piano, wooden flute
Buster Williams - bass
Billy Hart - drums, African percussion
Mtume - congas, percussion (tracks 2,3)
Songai Sandra Smith - vocals (tracks 1,2)

Tracks 5, 6 & 7
Andrew White - oboe
Hubert Laws - flute, alto flute
Gary Bartz - alto saxophone, soprano saxophone
McCoy Tyner - piano, wooden flute
Herbie Lewis - bass
Freddie Waits - drums, timpani, chimes

Recorded on September 10, 1970 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

McCoy Tyner / Extensions

70年代の最初に録音したこのアルバムからマッコイの怒涛の快進撃が始まった。頂点に達したのは1976年1月録音のFly With The Wind。その6年間で10枚ほどのアルバムをリリース。その推進力となったのは、コルトレーン亡き後のジャズ界を自分が牽引しなければという意気込みと、いわゆるエレクトリック・マイルスの幕開けとされる69年7月リリースのIn A Silent Wayへの対抗心があったからではないだろうか。

興味深いのは、前作Expansionsに続いて、マイルスグループのウェイン・ショーターが参加していること。フロントがゲイリー・バーツだけでは厚みに欠けると感じたのか、ショーターのアレンジに期待したのか。ましてや、アリス・コルトレーンのハープを全4曲中の2曲に入れている。この時点では、マッコイの足元はまだ固まっていない。

1. Message From The Nile
2. The Wanderer
3. Survival Blues
4. His Blessings

Wayne Shorter - tenor saxophone, soprano saxophone
Gary Bartz - alto saxophone
Alice Coltrane - harp (tracks 1,4)
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on February 9, 1970 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.