McCoy Tyner / The Greeting

マッコイ・タイナーが、自作曲Fly With The Windをライブで演奏すると言うのは、それなりの勇気があったはずだ。本作の2年前に出したアルバムFly With The Windは、スタジオ録音で完璧の演奏だった。敢えて、この曲をライブで取り上げたということは、自らへの挑戦だったのだろう。この頃のマッコイは、コルトレーンの音楽を継承しながらも、独自の音楽スタイルを築いていた時期だったと言える。

そのポテンシャルをさらに向上していくため、マッコイは当時としては新鋭のジョージ・アダムスをメンバーに加えた。この時、アダムスはすでに38歳であったが、プロとして活動を始めてまだ5年目。マッコイとアダムスとのアルバムでの初共演である。マッコイがそれをどこまで意識したのかは分からないが、タイトルThe Greetingとは、そんな意味を込めていたのだと思う。

1. Hand In Hand
2. Fly With The Wind
3. Pictures
4. Naima
5. The Greeting

George Adams - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Joe Ford - alto saxophone, flute
McCoy Tyner - piano
Charles Fambrough - bass
Woody "Sonship" Theus - drums, bells
Guilherme Franco - conga, berimbau, percussion

Recorded on March 17 & 18, 1978 at Great American Music Hall, San Francisco, CA.

McCoy Tyner / Inner Voices

社会人になって二子玉川のアパートに住み始めた頃、週末は渋谷のディスクユニオンに行くのが習慣だった。財布に余裕がある時は、新宿のユニオンまで足を延ばして…。渋谷か新宿かは覚えていない。このアルバムの前知識は何もなかったものの、輸入盤中古LPが数百円だったので、他のLPと一緒に購入。アパートに戻り、ターンテーブルに載せたときは驚いた。いきなり男女混声コーラス。マッコイは血迷ったかと思いながら、Inner voicesってそういことかと溜息をついた。全5曲中、4曲がコーラス入り。

で、Amazonで格安の輸入盤中古CDを最近見つけてしまい、性懲りもなくまたもや購入。LPではスクラッチノイズが多く、変にコーラスに集中してしまった記憶があった。改めてCDでじっくり聴いてみると、全体のモチーフが見えてくるのだが、コーラスに重点を置いたマッコイの意思を受け止めることができない。同じタイトルで、同じジャケットで、同じメンバーで、だけどコーラスを抜いても、緊迫感のあるアルバムに仕上がったのではないかと思うのである。

1. For Tomorrow
2. Uptown
3. Rotunda
4. Opus
5. Festival In Bahia

Alex Foster - tenor saxophone (tracks 2,4,5)
Joe Ford - alto saxophone (tracks 2,4)
Jerry Dodgion - alto saxophone (tracks 2,4), flute (track 5)
Ed Xiques - baritone saxophone (tracks 2,4), alto saxophone (track 5)
Cecil Bridgewater, Jon Faddis, Eddie Preston - trumpet (tracks 2,4)
Ernie Royal - trumpet (tracks 2,4,5)
Dick Griffin, Janice Robinson, Charles Stephens - trombone (tracks 2,4)
Earl McIntyre - trombone (tracks 2,4,5)
Earl Klugh - guitar (tracks 2,3,5)
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - bass
Eric Gravatt - drums (tracks 2,4)
Jack DeJohnette - drums (tracks 3,5)
Guilherme Franco - percussion (track 5)
Adrienne Anderson, Benjamin Carter, Fran Dorsey, Bessye Ruth Scott, Carl Scott, Suzanne Simmons, Joan Taylor - voices (tracks 1,3-5)

Recorded on September 1, 2, 6, 7 & 8, 1977 in NYC.

McCoy Tyner / Supertrios

タイトル通り複数(2つ)のトリオで構成されたアルバム。発売当時は2枚組LPだったが、CD化で1枚に集約。録音データから分かるように、ベースとドラムの2組は豪華メンバーで、それぞれ2日連続のセッション。主役のマッコイは4日連続で臨んだ。1970年代後半のジャズ界はマッコイの時代だった。外へ外へと発散していくマッコイのピアノ。そして、重量級のピアノトリオ。プロデューサーはオリン・キープニュース。

ジャケットに写ったマッコイは、「強力なメンバーを用意してくれたので、不自由なく演奏できたよ」と言っている感じだ。ところがである。本作から5ヶ月後にアルバムInner Voicesを録音。大胆にも男女混声コーラスを取り入れた。何となくコマーシャルリズムに乗りかかって来たマッコイ。本作を境にして、徐々に焦点が定まらなくなってきたのだ。

1. Wave
2. Blues On The Corner
3. I Mean You
4. The Greeting
5. Prelude To A Kiss
6. Moment's Notice
7. Hymn-Song
8. Consensus
9. Four By Five
10. Stella By Starlight
11. Lush Life
12. Blues For Ball

Tracks 1 - 6
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - bass (except track 3)
Tony Williams - drums (except track 5)
Recorded on April 9 & 10, 1977 at Fantasy Studios, Berkeley, CA.

Tracks 7 - 12
McCoy Tyner - piano
Eddie Gomez - bass
Jack DeJohnette - drums
Recorded on April 11 & 12, 1977 at Fantasy Studios, Berkeley, CA.