McCoy Tyner / Four Times Four

1970年代後半のハービー・ハンコック率いるV.S.O.P.により、4ビートジャズの復活のみならず、「売れる」ジャズへの転換があった。その勢いに乗って、企画モノのアルバムが作られるようになった。このアルバムは分かりやすい例。マッコイ・タイナー、セシル・マクビー、アル・フォスターをバックの布陣に据え、4人のフロントを迎えている。プロデューサーであるオリン・キープニューズはV.S.O.P.に勝つための作戦を練った訳である。ところが、フロントの一人はV.S.O.P.のメンバーだったフレディ・ハバード。明らかにミスキャスト。国内盤LPの悠雅彦氏のライナーノーツ(1980年11月24日付け)によると、当初はウディー・ショウが予定されていたらしい。

輸入盤CDを購入し、それにはキープニュース自身による英文解説(1993年付け)が載っていた。3月10日(月)朝、キープニュースがリハーサルのためにショウの自宅へ迎えに行ったが不在。すっぽかされたと言うことで、ハバードに代役が回ってきたということだ。3つのセッションが3月上旬録音なのに、ハバードのセッションだけ、5月末の理由はそこにあった。さらに、タイトルFour Times Fourには、2枚組LP計4面の意味も含まれていたらしい。CD化で、その隠れた意味はなくなってしまった、とキープニュースは書いている。

1. Inner Glimpse
2. Manha De Carnaval
3. Paradox
4. Backward Glance
5. Forbidden Land
6. Pannonica
7. I Wanna Stand Over There
8. The Seeker
9. Blues In The Minor
10. Stay As Sweet As You Are
11. It's You Or No One

Tracks 1, 2 & 3
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on May 29, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 4 & 5
John Abercrombie - electric mandolin
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on March 5, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 6, 7 & 8
Bobby Hutcherson - vibraphone
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on March 6, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 9, 10 & 11
Arthur Blythe - alto saxophone
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on March 3, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

McCoy Tyner / Horizon

CD化によって追加されたタイトル曲Horizonの別テイクを除いた5曲のうち、2曲がマッコイのオリジナル。残り3曲中、2曲がバイオリニストのブレイク、1曲がベーシストのファンブローの曲である。このバランスから、マッコイは自身の構想を無理やり推し進めるのではなく、メンバーとの協調作業を重視していたのだろう。それゆえに、アルバムSaharaやFly With The Window、そしてAtlantisなどに見られる強力なマッコイ・サウンドはここにはない。手探りながら、80年代へ向けての自分のサウンドを模索していたではないだろうか。

悠雅彦氏が1980年4月22日付けのライナーノーツで、このアルバムを詳しく分析している。悠氏の結論としては、1970年代の有終の美を飾ったすぐれた記録として高く評価している。反論するつもりはない、その通りだと思う。1980年代初めの評価としては。しかしながら、マッコイは、80年代に入ると迷走を始めた。残念ながら、有終の美を飾ったにもかかわらず、地平線の先に新天地はなかった。

1. Horizon
2. Woman Of Tomorrow
3. Motherland
4. One For Honor
5. Just Feelin'
6. Horizon [alternate take]

Joe Ford - alto saxophone, soprano saxophone, flute (tracks 1-3,5)
George Adams - tenor saxophone, flute (tracks 1-3,5)
John Blake - violin (tracks 1-3,5)
McCoy Tyner - piano
Charles Fambrough - bass
Al Foster - drums
Guilherme Franco - congas (tracks 1-3,5)

Recorded on April 24 & 25, 1979 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

McCoy Tyner / Together

マッコイに一番似合う言葉は「全速力」。間(ま)とかインタープレイなどの表現方法とは、対極的な位置に存在するジャズピアニスト。だからこそ、コルトレーンはマッコイを手放さず、マッコイはコルトレーン亡き後、自身のジャズを貫き、アルバムAtlantisとFly With The Windの2つの金字塔を打ち建てた。そこから先が難しい。それなりのスコアがあって、強力なメンバーを集められれば、ビジネスになるアルバムは作れる。だが、1980年代迎えるにつれ、新たな方向性を打ち出すジャズでないと、ファンは徐々に見捨てるようになってきた。つまり、ファンはコルトレーン後継者のような亡霊は追いかけなくなった。

このアルバムは、マッコイの作品が2曲、そして、ヒューバート・ロウズ、ジャック・ディジョネット、フレディ・ハバード、ボビー・ハッチャーソンの作品を加えて計6曲で構成。タイトルTogetherの意味はそこにある。さらに、ジャケット裏には、各曲のソロを担当したプレイヤーの名前が記載。Togetherなので全員参加を示したかったのだろうが、参加メンバーに同じ楽器のプレイヤーはいないから、ちょっとお節介な感じ。気になるのは、フレディの作品One Of Another Kind。アルバムV.S.O.P. The QuintetでOne Of A Kindという曲名で1977年7月にライブ演奏している。さらに、79年7月に田園コロシアムでも演奏。ハンコックに持ち込んだ曲を、フレディはマッコイにも提供した。新鮮さを示そうとしたTogetherではあったが、寄せ集めだった。

1. Nubia
2. Shades Of Light
3. Bayou Fever
4. One Of Another Kind
5. Ballad For Aisha
6. Highway One

Bennie Maupin - tenor saxophone, bass clarinet
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
Hubert Laws - flute, alto flute
Bobby Hutcherson - vibraphone, marimba
McCoy Tyner - piano
Stanley Clarke - bass
Jack DeJohnette - drums
Bill Summers - congas, percussion

Recorded on August 31 and September 3, 1978 at Fantasy Studios, Berkeley, CA.