Jackie McLean / Let Freedom Ring

ピアノの出だしからジャズ喫茶の匂い。この感覚が分かるのは、還暦を過ぎた世代だろう。キンキンと鳴る金属音のジャッキー・マクリーンのアルト。CDのライナーノーツは油井正一氏が担当。マクリーンとアート・ペッパーのアルトは共通して「塩辛い」音色を持っているとの持論。そして、マクリーン自身による解説も載っている(訳:和田政幸)。解説はこう終わる。「このセッションに於けるウォルター・デイビス、ビリー・ヒギンズ、ハービー・ルイスの好サポートに感謝したい。彼等の意欲的な態度と、その結果として出てきた演奏の両方について、評価"A"をあげたい。新世代の連中には、僕もすっかりインスパイアされてしまった。探求はなおもつづく。レット・フリーダム・リング(自由の鐘よ、鳴り響け)」。

アルバムタイトル"Let Freedom Ring"は、マクリーン自身によるものだろう。ジャケットでは、あえてダブルクォーテーションで括っている。解説の日付はないが1962年後半か。アルバムのリリースは63年5月。なぜ日付が大事かと言えば、1963年8月28日の「ワシントン大行進」でのキング牧師の演説「私には夢がある」の中に、フレーズLet Freedom Ringが何度も出てくるのだ。キング牧師は、もしかするとマクリーンのファンだったのかも知れない。

1. Melody For Melonae
2. I'll Keep Loving You
3. Rene
4. Omega

Jackie McLean - alto saxophone
Walter Davis, Jr. - piano
Herbie Lewis - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on March 19, 1962 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Jackie McLean / Bluesnik

後藤雅洋著書『ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか』を読んで購入したアルバムの一つで、輸入盤を手に入れた。偶然かも知れないが、CDのラベルBLUE NOTEの背景色がジャケットの淡い青と一致している。そんなことで、ジャッキー・マクリーンによるタイトル曲Bluesnikは、Blue + Snikと、勝手に思い込んでいた。ところが、Snikなる単語は辞書に見当たらない。Blues + Nikならば、Nikは「…行う人」とあった。つまり、「ブルース野郎」ということだ。

そう言えば、beatniks(ビート族)という言葉があったことを思い出した。Bluesniks(ブルース族)としなかったのは、「オレがブルースの第一人者だ!」というマクリーンのこだわりだろうか。さて、後藤氏は、このアルバムを「アナログ時代のB面の名盤。4曲目Cool Green以降のしみじみとしたマイナー調が魅力」と評している。同感である。別テイクを除けば、4曲目以降にマクリーンの作品はない。曲名はBluesnikでも、アルバムタイトルはBluesniksにすべきだったろう。

1. Bluesnik
2. Goin' 'Way Blue
3. Drew's Blues
4. Cool Green
5. Blues Function
6. Torchin'
7. Goin' 'Way Blues [alternate take]
8. Torchin' [alternate take]

Jackie McLean - alto saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Kenny Drew - piano
Doug Watkins - bass
Pete La Roca - drums

Recorded on January 8, 1961 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Jackie McLean / Jackie's Bag

1959年1月と60年9月のセッションを収録したアルバム。ジャッキー・マクリーンは当然だが、共通するメンバーはポール・チェンバースだけ。つまり、関連性のない2つのセッションを1つにまとめ、まぁ難しいことは考えずにバッグに詰めちゃったということだ。だが、2つには1年8ヵ月もの開きがある。

59年録音の3曲だけでは曲数が足りなかった。そう考えるのが普通だが、中途半端でスタジオを去るとは思えない。ソニー・クラークが1曲目に参加していないのが不自然なのだ。参加した残りの2曲もクラーク節が全く感じられない。つまり、クラークが絶不調のため、セッションを途中で打ち切ったと考えられる。さらに、本作のリリースは61年6月。59年10月録音のアルバムSwing, Swang, Swingin'のリリースが60年3月。60年4月録音のアルバムCapuchin Swingは60年12月リリース。つまり、ブルーノートはバッグ詰めの時間差攻撃に出たということ。

1. Quadrangle
2. Blues Inn
3. Fidel
4. Appointment In Ghana
5. A Ballad For Doll
6. Isle Of Java
7. Street Singer
8. Melonae's Dance
9. Medina

Tracks 1 - 3
Jackie McLean - alto saxophone
Donald Byrd - trumpet
Sonny Clark - piano (tracks 2,3)
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums
Recorded on January 18, 1959 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Tracks 4 - 9
Jackie McLean - alto saxophone
Tina Brooks - tenor saxophone
Blue Mitchell - trumpet
Kenny Drew - piano
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums
Recorded on September 1, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.