Jackie McLean / Demon's Dance

原田和典氏のライナーノーツによると、ジャケットはドイツ人のアヴドゥル・クラーワイン(1932年 - 2002年)によるもの。マイルスの『ビッチェズ・ブリュー』『ライブ・イーブル』、サンタナの『天の守護神』を手掛けている。この3枚に比べると、1967年12月録音(70年10月リリース)の本作は時代を揺るがすアルバムではないし、ジャケットもそれらと比較すると下品。その中で救われるのは、ウッディ・ショウ作Sweet Love Of Mineで、これは間違いなく名曲。しかし、ショウ自身はアルバムLive In Bremen 1983のみに収録しているだけ。

問題は、鈴木勲のアルバムBlue Cityで74年3月録音。これに収められた鈴木の作品45th Street - At 8th Avenue -は、Sweet Love Of Mineそのものである。自分が先に聴いたアルバムはBlue Cityなので、本作を聴いた時にはショウがパクったと思ったが、その逆である。いや、もしかすると、二人がそれぞれ参考にしたトラディショナル曲があるのではないかと調べてみたが、その痕跡は見つからなかった。いずれにしても、ブルーノートとしては珍しく、主役のジャッキー・マクリーンをリリースまで3年間待たせた。ジャケットの仕上がりに時間を要したのか。それとも、Sweet Love Of Mine盗作の疑いが起きたのか。

1. Demon's Dance
2. Toyland
3. Boo Ann's Grand
4. Sweet Love Of Mine
5. Floogeh
6. Message From Trane

Jackie McLean - alto saxophone
Woody Shaw - trumpet, flugelhorn
LaMont Johnson - piano
Scott Holt - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on December 22, 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Jackie McLean / It's Time!

所有するのは輸入盤CDで、国内盤には邦題が付いているのかと気になってしまう。自分ならば「今が旬!」としてみたい。で、誰が「旬」かと言えば、主役のジャッキー・マクリーンではなく、このアルバム全体の雰囲気を創り出しているハービー・ハンコック。ハンコックは、本作が録音された1964年8月の1年前にマイルスグループに参加。まさしく、時代を牽引するジャズピアニストとして躍り出たのである。

マクリーンの金属音的なアルトとハンコックのモーダルなピアノが、60年代半ばのジャズに一筋の光を射しこんだ。とは言っても、それほどにセンセーショナルなアルバムではないのだが、ジャケットにはビックリマークが所狭しと並ぶ。タイトルIt's Time!を除くと243個のビックリ。ジーっと見ているとクラクラしてくる。そして、赤文字で強調したJACKIE McLEANの中の小文字cが上ずっている。マクリーンのアルバムには上付きcがいくつかある。もう死語となってしまった「ウルトラC」をさりげなく強調しているのだ。

1. Cancellation
2. Das' Dat
3. It's Time
4. Revillot
5. 'Snuff
6. Truth

Jackie McLean - alto saxophone
Charles Tolliver - trumpet
Herbie Hancock - piano
Cecil McBee - bass
Roy Haynes - drums

Recorded on August 5, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Jackie McLean / One Step Beyond

全体的に不思議な印象を与えるアルバム。その理由は楽器構成。サックス、ドラム、ベースに加えてピアノが入らず、トロンボーンとヴァイブが入っているため。そして、ジャッキー・マクリーンの作品(1、3曲目)とグレイシャン・モンカ―の作品(2、4曲目)が、あまりにも曲想が違うこと。さらには、モンカ―の作品は、Frankenstein(フランケンシュタイン)とGhost Town(ゴースト・タウン)で、意味ありげな曲名になっている。だからと言って、アルバム全体の構成がバラバラではない。かなり計算されていて、だからこそOne Step Beyondというタイトルにしたのだろう。

1963年4月の録音。参加したトニー・ウィリアムスは45年12月生まれなので、17歳5ヶ月でのセッションである。トニーのWikipediaには、「62年11月、16歳のときジャッキー・マクリーンにスカウトされて、ニューヨークに移った。翌63年にはマイルスのいわゆる〈黄金のクインテット〉のメンバーに抜擢され、69年まで在籍した」とある。トニーの詳細なディスコグラフィーが見つからないが、英文Wikipediaを参照したところ、トニーにとってのデビューアルバムのようだ。トニーにとっても、One Step Beyondなのである。

1. Saturday And Sunday
2. Frankenstein
3. Blue Rondo
4. Ghost Town

Jackie McLean - alto saxophone
Grachan Moncur III - trombone
Bobby Hutcherson - vibraphone
Eddie Khan - bass
Tony Williams - drums

Recorded on April 30, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.