Gato Barbieri / Fenix

ガトー・バルビエリとマイルス・デイビスの接点は見いだせない。マイルスのディスコグラフィーに、ガトーは一度も出てこない事実からも明らかだ。しかし、本作の参加メンバーから、間接的なつながりがあったことが分かる。

エレキベースながらロン・カーター。マイルスのアルバムBitches Brew(1969年8月録音)に参加したレニー・ホワイト。アルバムBig Funの収録曲Ife(72年6月録音)に参加したロニー・リストン・スミス。さらに、本作では1曲のみの参加だが、マイルスバンド初のエレキギタリスト(67年12月から68年2月のセッション)であったジョー・ベック。Ifeは本作の録音1年後であるため、マイルスの洗礼を受けた、もしくは受けることになるミュージシャン達である。

そんな彼らを見事に統率したガトー。前作のThe Third Worldではトロンボーンとのフロント2管であったが、本作では1管に絞って不死鳥を演じようとした。ジャケットを見ると、不死鳥がガトー、しっかり掴まっているのがマイルスのように思えてくる。

1. Tupac Amaru
2. Carnavalito
3. Falsa Bahiana
4. El Dia Que Me Quieras
5. El Arriero
6. Bahia

Gato Barbieri - tenor saxophone
Lonnie Liston Smith - piano, electric piano
Joe Beck - electric guitar (track 1)
Ron Carter - electric bass
Lenny White - drums
Gene Golden - congas, bongos
Naná Vasconcelos - berimbau, bongos

Recorded on April 27 and 28, 1971 at Atlantic Recording Studios, New York.

Gato Barbieri / The Third World

ボブ・シールが1969年に設立した独立レーベルFlying Dutchmanは、78年の活動停止まで約100点のアルバムをリリース。そして、2017年10月に第1期30アルバム、18年1月に第2期30アルバムが国内で復刻された。ジャズのポテンシャルが下がっている時代での快挙。その中から、ガトー・バルビエリのアルバム5枚をまとめ買いした。合計は5千円也。そんなマニアがいるはずだと見込んだ販売戦略だったのかもしれない。

アルバムタイトルとなったThe Third World(第三世界)という曲は、収録されていない。つまり、この「第三世界」にガトーのポリシーが込められているということなのだろう。ジャケットにも、そんな雰囲気が感じられる。その裏面には、英文の短い解説が書いてあり、次のようなガトーのコメントを引用している。

"It was originally used by de Gaulle to represent an independent political force, a third force, between the American and Russian blocs. But after de Gaulle, Third World has come to mean the common interests of Asia, Africa and Latin America. As an Argentinian, I am part of that Third World."(この言葉は、もともとド・ゴールによってアメリカとロシアに挟まれた塊としての独立した政治勢力、第三勢力を表すために使用された。しかし、ドゴール以降、第三世界とはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの共通の利害関係を意味するようになった。アルゼンチン人である私は、第三世界の一部なんだ。)

1. Medley: Introduction / Cancion Del Llamero / Tango
2. Zelao
3. Antonio Das Mortes
4. Medley: Bachianas Brasileiras / Haleo And The Wild Rose

Gato Barbieri - tenor saxophone, flute, vocals
Roswell Rudd - trombone
Lonnie Liston Smith - piano
Charlie Haden - bass
Beaver Harris - drums
Richard Landrum - percussion

Recorded on November 24 & 25, 1969 at New York City.

Grant Green / Talkin' About!

アルバムタイトルTalkin' Aboutは、1曲目のラリー・ヤング作Talkin' About J.C.から拝借している。ジャケットには、このTalkin' Aboutを羅列。では、J.C.とは…。ライナーノーツを担当した行方均氏によれば、「もちろんジョン・コルトレーンだ」とある。レナード・フェザーの英文ライナーノーツには、”Talkin' About J.C. . . . mention of Coltrane brings to mind the first title in the album, dedicated of course to Trane.”とあるので、その焼き写しだろう。そして、ヤングのWikipediaでは「1964年にブルーノートに移籍した頃には、ジョン・コルトレーンの顕著な影響が見えるようになった」と記されている。

しかしながら、本作の2年半前、1962年2月に録音したヤングのリーダー作Groove Streetには、この曲が収録されているのだ。その時点で、コルトレーンの影響があったかもしれないが、J.C.をコルトレーンと断定して良いのだろうか。まぁ、そんなことを思いながら、グラント・グリーン、ラリー・ヤング、エルビン・ジョーンズのトリオによる濃密な演奏をあれこれとTalkin' Aboutしたくなるのだ。

1. Talkin' About J.C.
2. People
3. Luny Tune
4. You Don't Know What Love Is
5. I'm an Old Cowhand
6. Deep River

Grant Green - guitar
Larry Young - organ
Elvin Jones - drums

Recorded on September 11, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.