後藤雅洋 / ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか

2003年3月20日発行 河出書房新社 定価1700円。後藤氏には失礼ながら、年明けに送料込み580円で古本をAmazonから購入した。ちょうど10年前に出版。だが、内容的には決して色褪せていない。ジャズ喫茶が置かれている状況も、たぶん変わらないだろう。

学生時代から通い続けてきたジャズ喫茶。残念なことに、「通う」ではなく「探し求める」存在になってしまった。出張で地方に行くときは、まずはジャズ喫茶を検索する。何とか時間を作って訪問するのだ。正統派ジャズ喫茶の四谷『いーぐる』へは、都心での仕事ができたときに隙間を狙って…。

タイトルがウケを狙いすぎ。後藤氏は威張っていない。本の帯に書かれていることが、重要なメッセージ。「いまは自分の好みの音楽を聴くのが当たり前になっているが、ジャズ喫茶では他人の選んだアルバムを否応なしに聴かされる。これが大切だ」。つまり、ジャズ喫茶は修行の場なのである。

後藤雅洋 / ジャズの名演・名盤

講談社現代新書1990年11月20日発行(定価650円)。数年前に古本で手に入れ、何度も読み直してきた。著者である四谷ジャズ喫茶『いーぐる』の店主・後藤雅洋氏のジャズに対する感性は、自分にとっては素直に受け入れられる。なので、後藤氏が紹介するアルバムは、結果を恐れず?に購入してきた。まぁ、8割近くが自分にとって正解。これは、もの凄い高打率なのだ。

表紙には、こんなことが書かれている。「ジャズを聴き、ジャズに惚れればあとは一直線。練り上げられた豊かな音の深みにはまりこむ。入門から中毒へ、お勧めの名演・名盤を紹介」。楽器別、プレイヤー別の構成になっていて、非常に読みやすく勉強になる。しかし、入門者には少しハードルが高く、それこそ中毒症状が出始めた人向けだろう。本書の姉妹編とも言える『一生モノのジャズ名盤500』(小学館eBooks 2013年6月21日 電子書籍発行)は、むしろ初心者が対象。自分は、アルバムのデータ検索に有益と思いKindleに入れている。

Giuseppi Logan / The Giuseppi Logan Quintet

2009年9月号のスイングジャーナルに「幻のサックス奏者 ジュゼッピ・ローガン 喪失の40年」と題した記事が掲載された。この記事が書かれたのは7月下旬。その時点でアルバム制作の話があったようだ。それが実現したのが本作。前作Moreの録音は1965年5月。まさしく40年以上のブランクがあり、満を持しての発表。ローガンは、闘病生活やホームレスを乗り越えてのジャズ界復帰。そして、2020年4月17日に84歳で他界した。

どのサックス・プレイヤーとも比較ができない。尺度が違うのだ。ローガン独自の演奏スタイル。ヘロヘロ、フニャフニャ。芯を完全に外している。というか、彼には「芯」がない。彼の頭の中に鳴っている音楽は、太陽の周りを数十年、いや数百年の周期で廻っている惑星のようなもの。注目すべきは、Over The RainbowやBlue Moonのようなポップス系の曲をやっているだけでなく、マイルスの作品Freddie Freeloaderを取り上げていること。自分の根っこはジャズなんだ、とさりげなく主張している。

1. Steppin'
2. Around
3. Modes
4. Over The Rainbow
5. Bop Dues
6. Blue Moon
7. Freddie Freeloader
8. Love Me Tonight

Giuseppi Logan - saxophone, piano (tracks 6,8)
Matt Lavelle - trumpet, bass clarinet
Dave Burrell - piano
Francois Grillot - bass
Warren Smith - drums

Recorded on September 15, 2009 at The Magic Shop, New York City.