Chet Baker / In New York

意外にもと言うか、やっぱりと言ったほうがよいのだろう。チェット・ベイカーとジョニー・グリフィンの共演が残されたアルバムは、この1枚のみ。グリフィンは全7曲中の3曲のみの参加であるが、この二人の演奏スタイルは水と油といった感じ。プロデューサーのオリン・キープニュースは、この組み合わせで何を狙ったのか。

グリフィンのブロウに煽られて、ハードにトランペットを吹くベイカーを描いたような気がするのだが…。だとすれば、3曲とは言わず、全曲参加させるべきだった。しかも、ベイカーに気を遣ってかグリフィンは少し抑え気味に吹いている。ベイカーのディスコグラフィーを見ると、1957年末から活動の拠点をロスからニューヨークに移した。タイトルをIN NEW YORKと題したのは、ニューヨークでの人気の定着を図ろうとしたからに違いない。しかしながら、いま一つ中途半端な出来になってしまったようだ。

1. Fair Weather
2. Polka Dots And Moonbeams
3. Hotel 49
4. Solar
5. Blue Thoughts
6. When Lights Are Low
7. Soft Winds

Chet Baker - trumpet
Johnny Griffin - tenor saxophone (tracks 1,3,5)
Al Haig - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded in September, 1958 at Reeves Sound Studios, NYC.

Cecil Taylor / Dark To Themselves

1976年6月18日のユーゴスラビアでのライブアルバム。所有していたLPは、A面がStreamsで23分0秒、B面がChorus Of Seedで26分12秒だった。CD化によって、Streams And Chorus Of Seed という1曲のみの形になった。演奏時間は61分48秒。つまり、1時間以上の演奏をLPに収めるため、12分以上をカットしていたのだ。フロント3管、ピアノ、ドラムの構成。セシル・テイラーのベースレスによるアプローチは、より自由な音空間を手に入れるためだったのだろう。

1時間休みなしの圧倒的なパフォーマンスに、当時のユーゴスラビアの聴衆は何を感じたのか。曲の途中(A面の終わり)で拍手が湧きあがり、曲の最後も拍手で終わる。それはLPのことで、CDでは演奏の最後のみに拍手。しかし、決して大興奮という雰囲気ではなく、統率されたようでもない。「素晴らしい演奏だけど、この程度のフリーさじゃ、それほどは興奮しないね」みたいな感じ。ところで、タイトルDark To Themselvesは何を意味しているか。ジャケット裏にはテイラーの詩が載っている。その一文にDark night vacant shadows peep the borrowed friend(暗い夜の空虚な影が借り物の友人を覗き込む)とあるが、テイラーのピアノ以上に難解である。

1. Streams And Chorus Of Seed

Jimmy Lyons - alto saxophone
David S. Ware - tenor saxophone
Raphe Malik - trumpet
Cecil Taylor - piano
Marc Edwards - drums

Recorded on June 18, 1976 at The Ljubljana Jazz Festival, Yugoslavia.

Chico Freeman / Destiny's Dance

参加メンバーを見ると、ウィントン・マルサリスがチコ・フリーマンを支えるキーマンのように思えてしまうが、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブが全体の緊張感を出し、セシル・マクビーのベースがメンバーを引き締めている。マルサリスを担ぎ出すことなく、フロントはフリーマンのみで勝負してもよかったはずだ。

所有する輸入盤CDには、ライナーノーツは一切なく、フリーマン自身による短いコメントが記載されていたので、訳してみた。なお、本作の録音はレーガン大統領の時代である。

When spirits in the past travel through the present to the future Embracing Oneness ... realizing God's purpose in life's cycle when the elements are right and the magic happens, let Destiny Dance. God is greater than all.(過去の魂が現在から未来へと旅すれば、包み込まれた和の道へと導いてくれる。神が人々に望んでいるのは、正義のあり方と、人知を超えた力が起きる事。運命を賭けて踊ろう。神に背いてはならないのだ)

1. Destiny's Dance
2. Same Shame
3. Crossing The Sudan
4. Wilpan's Walk
5. Embracing Oneness
6. C & M

Chico Freeman - tenor saxophone, bass clarinet
Wynton Marsalis - trumpet (tracks 1,3,4,6)
Bobby Hutcherson - vibraphone
Dennis Moorman - piano (tracks 1,4,6)
Cecil McBee - bass
Ronnie Burrage - drums
Paulinho Da Costa - percussion (track 4)

Recorded on October 29 & 30, 1981 at Ocean Way Recording, Hollywood, CA.