Charles Mingus / Cumbia & Jazz Fusion

ミンガスには「闘争」というイメージがある。ウッドベースという楽器を使い、ジャズという音楽を通じて、社会の矛盾に対して闘ってきた。しかし、このアルバムは、音楽は、ジャズは楽しいんだ!と訴えている。一曲目の後半から、ミンガスのボーカル(叫び)が入る。「よし!もっと盛り上がろうぜ!!」みたいな感じだ。ミンガスのアルバムは45枚所有していて、その半分近くのジャケットがミンガスの写真。唯一、ミンガスが微笑んでいるのは、このアルバムだけ。Cumbia(クンビア)とは、南米コロンビアの沿岸地方に伝統的に伝わるリズムと舞曲のこと。このクンビアとジャズとの融合を図ったミンガス・ミュージックの総決算と言いたい。

LPのライナーノーツには、油井正一、岩浪洋三、佐藤秀樹、ナット・ヘントフの4氏が名を連ねている。その中で、ヘントフの解説にミンガスのボーカルの内容が書かれていた。「コロンビアでは、山に住むインディオは貧しく、ときどき街におりてきては、金持ちたちの唄をうたう。なにももたないことと、もちすぎていることの、違いをうたった歌だ。それがわたしをとらえて、アメリカのゲットーに思いを馳せさせた、というのは、ゲットーの黒人たちだって、金はないからね。それに、彼らだって望んでいるんだ、わたしがうたうような〈人生のいいものをすべて〉」。金なんかなくても、人生を楽しもう!という感じだろうか。

1. Cumbia & Jazz Fusion
2. Music for "Todo Modo"

Charles Mingus - bass, vocals, percussion, arranger
Jack Walrath - trumpet, percussion
Dannie Richmond - drums

Track 1
Jimmy Knepper - trombone, bass trombone
Mauricio Smith - flute, piccolo, soprano saxophone, alto saxophone
Paul Jeffrey - oboe, tenor saxophone
Gene Scholtes - bassoon
Gary Anderson - contrabass clarinet, bass clarinet
Ricky Ford - tenor saxophone, percussion
Bob Neloms - piano
Candido - congas
Daniel Gonzales - congas
Ray Mantilla - congas
Alfredo Ramirez - congas
Bradley Cunningham - percussion
Recorded on March 10, 1977 in NYC.

Track 2
Dino Piana - trombone
Anastasio Del Bono - oboe, english horn
Pasquale Sabatelli - bassoon
Roberto Laneri - bass clarinet
Giancarlo Maurino - alto saxophone (uncredited)
Quarto Maltoni - alto saxophone
George Adams - tenor saxophone, alto flute
Danny Mixon - piano, organ
Recorded on March 31 and April 1, 1976 at Dirmaphon Studio, Rome, Italy.

Carla Bley / Jazz Realities

ライナーノーツで児山紀芳氏は、このアルバムが録音に至った背景や、当時のフリージャズの状況を書いているが、演奏内容にはほとんど触れていない。そして、こう締めくくっている。「〈ジャズ・リアリティーズ〉は、いまではすっかりジャズ界の一角を占める大御所となったカーラやマイクたちの多感だった青春時代の汗の証といえよう」。

つまり、歴史的に価値あるアルバムだが、演奏内容は語るほどではないと暗に言っているのだ。残念ながら、同感である。自由になれない不自由さがここにあり、これが「現実=リアリティー」だとすれば、ジャズという枕詞を外して欲しかった。なお、一時期CD化されたものの、現在は廃盤状態。これも現実だ。

1. Doctor
2. Oni Puladi
3. J.S.
4. Walking Batterie Woman
5. Closer
6. Communications No.7

Michael Mantler - trumpet
Steve Lacy - soprano saxophone
Carla Bley - piano
Kent Carter - bass
Aldo Romano - drums

Recorded on January 11, 1966 in Baarn, Holland.

The Cookers / Look Out!

ビリー・ハーパーの最近の動向が知りたくて、出会うことのできたアルバム。現在は、2010年に結成したグループThe Cookersが活動の中心になっているようだ。このグループのアルバムは、この1枚しか所有していないので、あれこれと語ることはできない。英国のジャーナリストKevin Le Gendre(ケヴィン・ル・ジャンドル)による、タイトル"EYES OPEN FOR LOVE, TRUST AND RESPECT"(愛、信頼、リスペクトに見開かれた目)の解説文の一部を以下に引用する。演奏だけでなく、紙ジャケット内のメンバーの写真を見ると、ケイブルズの言う「エネルギッシュ」が強く感じ取れるのだ。

ザ・クッカーズの中には70代のメンバーも数名おり、彼らは音楽への生涯の献身から生まれた活気と見識を操り音楽を演奏している。全てのコーラス、全てのユニゾン、全てのソ口、そして全てのコール・アンド・レスポンスの瞬間が、そのミュージシャンたちの計り知れない才能、そしておそらく何よりも、彼らのパーソナリティの結束を鮮明に映し出している。バンド・メンバーであるビリー・ハーパー、エディー・ヘンダーソン、ドナルド・ハリソン、そしてジョージ・ケイブルズの4人は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズに所属していた。4人ともがその期間を楽しみ、その経験が持つかけがえのない性質、そして、結果として現在彼らに課せられているその知識を継承し、未来へ繋ぐという重大な責任を理解している。

「ザ・ジャズ・メッセンジャーズでは、若者達が自分たちの技術を磨きつつ、自分自身を強く主張していた」とケイブルズは言う。「一方我々は、若い精神を持ちながらも、彼らより年を重ねていて、その分精通もしている。これは決してうぬぼれて言っているわけじゃない。このバンドはエネルギッシュで、なりふり構わず突進するんだ。そこには沢山の愛と信頼、そしてリスペクトが詰まっているんだよ」。

1. The Mystery of Monifa Brown
2. Destiny is Yours
3. Cats Out Of The Bag
4. Somalia
5. AKA Reggie
6. Traveling Lady
7. Mutima

Billy Harper - tenor saxophone
Donald Harrison - alto saxophone
Eddie Henderson - trumpet
David Weiss - trumpet
George Cables - piano
Cecil McBee - bass
Billy Hart - drums

Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.
Released on September 17, 2021.