Chico Freeman / Tangents

何の事前情報も得ずに購入したアルバム。1980年代に入って、チコ・フリーマンはどんなジャズをやっていたのかを知りたかった。最初に聴いた時、ボーカルが随所に現れてびっくりした。クレジットを見ると、ボビー・マクファーリンの名が。「驚異のボイス」と呼ばれた男。以下はCD帯から。

「〈輪廻学〉からいっそう編成を拡大して、カラフルなサウンドを生み出していったチコ・フリーマン。サックスにスティヴ・コールマンやジョン・パーセルといった強力メンバーを加えるとともに、ボーカルのボビー・マクファーリンが声によるユニークな即興を聴かせてゆく。バスクラが不思議な効果を生み出してゆくタイトル曲をはじめ、チコの実力がよく示されているモニュメンタルな1枚になっている」。輪廻学とは、アルバムTradition In Transitionの邦題。それはよしとして、マクファーリンのボイスが耳障りで仕方ない。自分としては、ボイス無しのアルバムTangents(接線)に触れてみたい。

1. Tangents
2. Sir Tashi And The Yetti
3. Ballad For Hakima
4. Fifty Tenth Street
5. Computerized Indifference
6. Sangoma And Nelly
7. You Are The One
8. Spook And Fade

Chico Freeman - woodwind, percussion
Steve Coleman - alto saxophone, soprano saxophone
John Purcell - woodwind
Jay Hoggard - vibraphone
Mark Thompson - piano
Kenny Werner - piano, synthesizer
Cecil McBee - bass
John Koenig - bass
Billy Hart - drums
James Bradley, Jr. - drums
Frederick Waits - drums, percussion
Bobby McFerrin - vocals

Recorded in 1984.

Chet Baker / CHET

タイトルが安易にCHETとなっているが、英文ライナーノーツにはthe lyrical trumpet of CHET BAKERとサブタイトルが付いている。「チェット・ベイカーの叙情溢れるトランペット」では、押しつけがましいと、プロデューサーのオリン・キープニュースは思ったのだろう。今となれば、Chet Baker with Bill Evansとすれば、もっと話題に上がるアルバムになったに違いない。そして、最悪なツーショットのジャケットをビル・エバンスとのセッション風景にしていれば尚更だ。

だが、ここでのエバンスのピアノは控え目。さらに、2曲はエバンスに替わって、ジム・ホールのギターがバックを支えている。そして、ハービー・マンのフルート、ペッパー・アダムスのバリトンサックスが絶妙な味付け。しかし、全体的には淡々と演奏が流れて行く。役者を揃え過ぎたことで、互いに遠慮している感じだ。タイトルCHETだけどCHATしていない。

1. Alone Together
2. How High The Moon
3. It Never Entered My Mind
4. 'Tis Autumn
5. If You Could See Me Now
6. September Song
7. You'd Be So Nice To Come Home To
8. Time On My Hands (You In My Arms)
9. You And The Night And The Music
10. Early Morning Mood

Chet Baker - trumpet
Herbie Mann - alto flute (except tracks 3,6,8)
Pepper Adams - baritone saxophone (except tracks 3,6,8)
Kenny Burrell - guitar (tracks 3,6)
Bill Evans - piano (except tracks 3,6)
Paul Chambers - bass
Connie Kay - drums (tracks 1-3,5-7)
Philly Joe Jones - drums (tracks 4,8-10)

Tracks 1, 2, 3, 5, 6 & 7
Recorded on December 30, 1958 at Reeves Sound Studios, NYC.

Tracks 4, 8, 9 & 10
Recorded on January 19, 1959 at Reeves Sound Studios, NYC.

Charles Lloyd / I Long To See You

ディランの作品Masters Of War(戦争の親玉)から始まるアルバム。その事を知って、迷わず購入した。自分が手に入れた最初のジャズのアルバムは、キースのSomewhere Beforeで、ディラン作My Back Pagesから始まるアルバムだったため。たぶん高校3年か浪人の頃だった。1966年、キースはチャールス・ロイドのグループに参加し、アルバムForest Flowerで脚光を浴びた。その二人がディランの作品を取り上げるという事は、何かの縁なのだろう。さらに、4曲目のアメリカ民謡Shenandoah(シェナンドー)は、キースがアルバムThe Melody At Night, With Youに、ディランはアルバムDown in the Grooveにそれぞれ収録している。

ロイドというミュージシャンは、非常に間口が広い。自身はジャズミュージシャンという意識があるのだろうが、ジャズという音楽を固定的に捉えていない。本作では、ウイリー・ネルソンとノラ・ジョーンズがゲスト参加。間口だけではなく人脈の広さもうかがえる。ちなみに、ディランはネルソン作のPrecious MemoriesをアルバムKnocked Out Loadedで歌っている。音楽のジャンルが違っていても、互いに触発されていることが分かる。2015年、ロイドがジャズの新たな可能性を示したアルバム。録音当時78歳。まさしく、こんなアルバムにI Long To See You(会いたかった)のだ。

1. Masters Of War
2. Of Course, Of Course
3. La Llorona
4. Shenandoah
5. Sombrero Sam
6. All My Trials
7. Last Night I Had The Strangest Dream [featuring Willie Nelson]
8. Abide With Me
9. You Are So Beautiful [featuring Norah Jones]
10. Barche Lamsel

Charles Lloyd - tenor saxophone, alto flute
Bill Frisell - guitar
Greg Leisz - steel guitar
Reuben Rogers - bass
Eric Harland - drums
Willie Nelson - guitar, vocals (track 7)
Norah Jones - vocals (track 9)

Recorded on April 28, 2015 at The Lobero Theatre, Santa Barbara, CA (except track 5).