Bob Dylan / マイ・バック・ページズ

河出書房新社 2016年12月30日発行 定価1,300円。ディランのアルバムや書籍は、よほどのことがない限り購入してしまう。自分にとって新しい情報があるかどうか別として、誰が何を感じているかを知りたくなるのだ。この本は、ノーベル文学賞を受賞した後に編集されただけあって、文学や詩の素養を持っていないと、読みこなせない。なので、またも勉強の材料が増えたことになる。

波長が一番あったのはピーター・バラカンの次の一節。

「ぼくの座右の銘は〈ライク・ア・ローリング・ストーン〉の最後に出てくるWhen you got nothing, you got nothing to lose(なにも持っていなければ失うものもない)なんです。この生き方しかないじゃない。ヘンにものをもつと逆に失うものがいっぱい出てきて、自由に行動できなくなるし、冒険心もなくなってしまう。これが人間にとっていちばんおそろしいことじゃないかと思います」。

湯浅学 / ボブ・ディラン ロックの精霊

2013年11月20日発刊 岩波新書 定価760円。この本を読むまで、湯浅学と言う音楽評論家は知らなかった。ネットで調べると、同学年である。大学在学中に、大瀧詠一の事務所・スタジオでアシスタントを経験したとあった。音楽評論が主な仕事らしいが、ジャンルにはこだわっていないようだ。この本は、コンパクトにディランの生き方を描いている。ディランをもっと知りたい人には、勧めたい。

しかし、書かれている内容の情報源は、ディランの「自叙」などから。彼独自の視点がちりばめられているものの、強烈に伝わってくるメッセージは少ない。悪い意味ではないが、少し教科書的な印象を受けた。本書の『あとがき』に「ボブ・ディランがいなかったらロックはこうなっていなかった。それは確かなことだ」とある。じゃあ、どうなっていたかと想像する一文が欲しいのだ。

監修=菅野ヘッケル / ボブ・ディラン読本

2012年7月6日発行・音楽出版社。この本をネットで購入して、数ヶ月が経ってしまった。B5版160頁ということもあって、通勤時のカバンに入れるには重すぎたため積んでおいた。ようやく、ページを開くチャンスが。新幹線往復での広島出張。一気に読み切った。しかし、新しい発見はほとんどなかった。ということは、ディランを自分なりに聴き込んできた証拠でもある。

この本の表紙には「2012年5月24日、71歳になったボブ・ディランは、50年のキャリアをさらに超えて歌い続ける」と書いてある。つまり、デビュー50年を記念して発行された本。ディランを聴いてきた人には、それほど価値がある本ではない。ただ、アルバムTempestがリリースされ、デビュー50年の年に自分がいるという証拠として所有する価値はあるのだろう。この本を読んで思い出した曲 My Back Pagesの一節。

Ah, but I was so much older then, I'm younger than that now.
ああ、わたしはあんなにも年老いていた 今はあのときよりずっと若い