Bud Powell / Piano Interpretations

このアルバムが、いわゆる「ジャケ買い」の対象になるのかわからないが、秀逸なジャケットであることは確か。バド・パウエルが1954年から56年にヴァーヴに残したアルバムは、正直言って躍動感に欠ける。しかし、聴き飛ばしてしまうとパウエルの真髄には迫れない。本作の正確なタイトルは、Piano Interpretations の後にby Bud Powellと続く。つまり、「パウエルによるピアノの解釈」。パウエルというジャズピアニストを一つの型にはめてしまわないように、と主張している気がするのだ。

ところで、ジャケットはイラストレーターDavid Stone Martin(デビッド・ストーン・マーティン)によるもの。この時期のパウエルの特徴をよく捉えている。ジャケット右半分のバックが黄色だが、ピンクのバージョンも存在している。マーティンは、最終的に400枚以上のアルバムのイラストを手掛けたそうだ。そして、パウエルのアルバムJazz Giantも彼の作品で、タイトルをうまく表現している。

1. Conception
2. East Of The Sun (And West Of The Moon)
3. Heart And Soul
4. Willow Groove
5. Crazy Rhythm
6. Willow Weep For Me
7. Bean And The Boys
8. Lady Bird
9. Stairway To The Stars

Bud Powell - piano
George Duvivier - bass
Art Taylor - drums

Recorded on April 25 & 27, 1955 at Fine Sound Studios, New York.

Bud Powell / Bud Powell '57

1954年12月から55年1月の録音。アルバムBud Powell's Moodsと録音時期が重なるので、この2枚は姉妹編の位置付け。CD帯から。「好不調の波を繰り返していた時期の凄まじいドキュメント。初期のような超絶的な神業は見られないが、円熟の美を感じさせる」。録音の時点で、バド・パウエルは30歳。他界したのは41歳。この時点で「円熟」と言ってよいのかどうか。

それよりも、55年内にリリースされたときのタイトルはJazz Originalだった。パウエルの作品が一切なく、スタンダード曲が中心だったからだろう。しかし、57年に再発した時、タイトルを「'57」と変えてしまったのだ。なぜに市場を混乱させることをしたのか。ジャズのアルバムでは、再発時にタイトルを変更することは良くあるが、このやり方は前代未聞。その当時、「Jazz Original」は登録商標されていたのかも知れない。もう65年前の出来事。

1. Deep Night
2. That Old Black Magic
3. 'Round Midnight
4. Thou Swell
5. Like Someone In Love
6. Someone To Watch Over Me
7. Lover Come Back To Me (Bean And The Boys)
8. Tenderly
9. How High The Moon

Tracks 1, 2, 3 & 5
Bud Powell - piano
Percy Heath - double bass (except 5)
Max Roach - drums (except 5)
Recorded on December 16, 1954 at Fine Sound Studios, New York.

Tracks 4, 6, 7 & 8
Bud Powell - piano
Lloyd Trotman – bass
Art Blakey – drums
Recorded on January 11, 1955 at Fine Sound Studios, New York.

Track 9
Bud Powell - piano
Lloyd Trotman – bass
Art Blakey – drums
Recorded on January 12, 1955 at Fine Sound Studios, New York.

Bud Powell / Bud Powell's Moods

1954年6月の2つのセッション、そして55年1月のセッションから構成。この期間には他のセッションも行われ、アルバムBud Powell '57としてリリースされている。本来はJazz Originalというタイトルであったが、1957年の再発で意味もなく変更されてしまった。プロデューサーは、どのセッションもノーマン・グランツ。

明らかにバド・パウエルが不調な時期。何故、グランツは精力的に録音を重ねたのだろうか。彼のWikipediaには、こんな一文がある。Norman Granz opposed racism and fought many battles for his artists, many of whom were black.(グランツは人種差別に反対し、アーティストのために数多く戦ってきた。そのほとんどは黒人だった)。

「誰にだって好不調はある。不調なときだからこそ、手を差し伸べなければならない」。そんな気持ちだったのではないだろうか。タイトルは「バド・パウエルの気持ち」だが、これをノーマン・グランツと置き換えても良いのだ。となると、ジャケットはパウエルとグランツのようにも見えてくる。

1. Moonlight In Vermont
2. Spring Is Here
3. Buttercup
4. Fantasy In Blue
5. It Never Entered My Mind
6. A Foggy Day
7. Time Was
8. My Funny Valentine
9. I Get A Kick Out Of You
10. You Go to My Head
11. The Best Thing For You

Tracks 1, 2, 3 & 4
Bud Powell - piano
George Duvivier - bass
Art Taylor - drums
Recorded on June 2, 1954 at Fine Sound Studios, New York.

Tracks 5, 6, 7 & 8
Bud Powell - piano
Percy Heath - bass
Art Taylor - drums
Recorded on June 4, 1954 at Fine Sound Studios, New York.

Tracks 9, 10 & 11
Bud Powell - piano
Lloyd Trotman - bass
Art Blakey - drums
Recorded on January 12, 1955 at Fine Sound Studios, New York.