2枚のDVDで計208分の映像。『キネマ旬報社』データベースより。「マーティン・スコセッシ監督が、ボブ・ディランの音楽と生き様に迫ったドキュメンタリー。今まで決してカメラの前でインタビューを受けなかったボブの貴重な証言や、未公開ライブ映像などを収録する」。
1枚目のディスクには、ディランのアルバムTogether Through Lifeのジャケットに使われた写真が、ほんの一瞬だけ写し出される。この写真は、Bruce Davidson(ブルース・デビッドソン)の写真集Brooklyn Gangの中の一枚。写真の前後に流れるテロップは、Jack Kerouac(ジャック・ケルアック)のMexico City Blues - 228th Chorusの詩の翻訳。その原詩を探し出すことができた。milkを「乳」と訳しているが、聖書からは「実り豊かな土地」という意味があるらしい。
人を褒めよ 人は乳に生まれ 百合に生きる
バイオリンの音 空虚なる乳に響く
花びらを褒めよ もろい思考肉体
迷いを褒めよ 小さな波を
聖なる海を褒めよ
書いている私を 死んでいる私を 再び死ぬ私を褒めよ
Praised be man, he is existing in milk and living in lilies
And his violin music takes place in milk and creamy emptiness
Praised be the unfolded inside petal flesh of tend'rest thought
Praised be delusion, the ripple
Praised be the Holy Ocean of Eternity
Praised be I, writing, dead already and dead again
2枚目のディスクでは、ディランの興味深いコメント。「最高の演奏はステージ上で生まれる/僕のレコードの中にはない/その瞬間・・・瞬間/観客に届くことが大事だ」。なるほどと思ってしまう。だが、自分の場合は、来日したディランのステージを2度しか観ていないのだ。