キリスト教三部作の三作目Shot Of Loveの録音から2年後、ディランは1983年4月にアルバムInfidelsのセッションを開始した。infidelとは不信心者、異教徒、異端者という意味。それまでの三作を否定するような挑戦的なタイトルである。全てがディランの作品で、難解な曲が並び、自力での訳詞にはかなり苦労した。その際、1991年のディランへのインタビュー記事をネット上で見つけた。インタビュアーが1曲目のJokermanについて尋ねたところ、ディランは「自分からは過ぎ去ってしまった曲であり、アルバムInfidelsの多くの曲も同じだ」と答えている。しかしながら、このJokermanは2003年11月までに157回も歌っているのだ。
ラストのDon't Fall Apart On Me Tonightで、ようやく純粋なラブソングに辿り着く。「今夜、僕から離れてはだめだ/昨日はただの想い出/明日のことは分からない/僕には君が必要なんだ」と歌い切る。ところが、あの『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲーブルが歌詞の中に登場。この意表を突くディランのやり方。だからこそ、本来の「ボブ・ディラン」に立ち戻ったと思えるのである。だが、この曲はライブで一度も歌っていない。インタビュー通り、風と共に過ぎ去ってしまったディラン自身の歌。
1. Jokerman
2. Sweetheart Like You
3. Neighborhood Bully
4. License To Kill
5. Man Of Peace
6. Union Sundown
7. I And I
8. Don't Fall Apart On Me Tonight
Bob Dylan - guitar, harmonica, keyboards, vocals
Alan Clark - keyboards
Sly Dunbar - drums, percussion
Clydie King - vocals on "Union Sundown"
Mark Knopfler - guitar, production
Robbie Shakespeare - bass guitar
Mick Taylor - guitar
Recorded in April - July 1983.