このアルバムがリリースされた1979年の前年、ディランはワールド・ツアーを開始し初の来日公演を行った。自分は武道館の後方に座り、何の曲を聴いたのかは全く覚えていない。ディランを見たことだけに満足していた。一転して、このアルバムでは新生ディランを前面に出した。キリスト教うんぬんと今でも言われているが、新たな極致を見出したのだと当時は感じた。
古い話だが、2011年5月9日の朝日新聞朝刊27面に、詩人・長田弘氏のコメントがあった。「ディランの曲は、Chant(詠唱)であり、Hymn(賛歌)でありAnthem(頌歌)。何度聴いても飽きない。というより、繰り返し聴くことでしか意味をなさない」。例えば、4曲目Slow Trainで繰り返されるフレーズは「ゆっくりと、ゆっくりと汽車がやってくる、曲がりながら」。さらに歌詞を読み込んでいくと「人々は飢え渇いているのに、穀物倉庫は満杯ではちきれそう/食料を分け与えるより備蓄するほうに金がかかるんだ」と歌っていることに気付く。何度も聴き込むことで、少しずつディランに迫れるのだ。
1. Gotta Serve Somebody
2. Precious Angel
3. I Believe In You
4. Slow Train
5. Gonna Change My Way Of Thinking
6. Do Right To Me Baby (Do Unto Others)
7. When You Gonna Wake Up?
8. Man Gave Names To All The Animals
9. When He Returns
Bob Dylan – guitar, vocals
Barry Beckett – keyboards, percussion
Mickey Buckins – percussion
Carolyn Dennis – background vocals
Tim Drummond – bass guitar
Regina Havis – background vocals
Mark Knopfler – lead guitar
Muscle Shoals Sound Studio – horns
Helena Springs – background vocals
Pick Withers – drums
Recorded in April 30 – May 11, 1979.