フランス・アンティーブ・ジャズ・フェスティバルでのライブ演奏。世間では、かなり評判の高いアルバムである。しかし、冷静に聴くと音が前に出ていない。それは録音状態ではなく、覇気をあまり感じないということ。それぞれの曲が、予定通りに終わっていく。曲が始まった瞬間に、終わらせ方を考えている。そんな気がする。ステージに立ったのだから、最高のパフォーマンスを演じなければならない。そのことが先行し、集中度に欠けている。
そんなふうに聴きながら、キース自身のライナーノーツ(翻訳)を読んだ。要約すると。「コンサート当日まで雨が降り続き、その日も雨。ゲイリーは癌治療の大手術を受けたばかり。ジャックは前年のステージで壁板にぶつかるというアクシデント。演奏前のディナーは雨の中。ゲイリーは演奏をやりたくないと言う。それでもステージに上がったら、彼のベースの近くで水漏れ。そして、短時間でのサウンド・チェック」。つまり、最悪の状態でのステージだった。そんな演奏のアルバムなので最高の出来になったはずなのだが、凍るような怖さは、ここにはない。ECMのジャケットも相変わらずの手抜き。
1. If I Were A Bell
2. Butch & Butch
3. My Funny Valentine
4. Scrapple From The Apple
5. Someday My Prince Will Come
6. Two Degrees East, Three Degrees West
7. Autumn Leaves / Up For It
Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums
Recorded on July 16, 2002 at Festival De Jazz d' Antibes, Juan Les Pins, France.