フリー・インプロビゼーションによるキース・トリオと紹介されるアルバム。しかし、その枕詞にはそれほどの意味はない。あらかじめ題材を決めているのと、曲想の簡単な約束だけを決めて演奏へ入るのに、根本的な違いはなく、違いがあるとすれば、聴き手側の気持ち。スタンダードであれば、どういう経路でどう着地するかを読める。なので、それに合わせて自分の気持ちを高めることができ、自然に拍手することになる。フリーの場合は着地を読めないからこそ、一瞬一瞬の演奏にかなり集中する必要がある。演奏者との感性が合わなければ、集中できないだけの話。
ライナーノーツでキース自身がこんなことを書いている。「ぼくらはなぜか、(ライブ演奏の)ロンドンでブルースの言語を避けることができなかった。フリーの演奏をしているときでさえ、そうだった。ブルースはとても幅広く浸透していて、真実味がある。ぼくらはときとして、ブルースから解放されているときでさえ、ブルースと共に生きているのだ」(訳:坂本信氏)。つまり、スタンダードであろうが、フリーであろうが、ブルースを感じなければ、もうそれはジャズではないということだ。
1. From The Body
2. Inside Out
3. 341 Free Fade
4. Riot
5. When I Fall In Love
Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums
Recorded on July 26 & 28, 2000 at the Royal Festival Hall, London.