ロリンズのジャズは駆け引きではない。駆け引きは、集中して聴かないとその本質の面白さが分からない。ロリンズの演奏は、ごく単純な「駆け」だけ。どれだけ攻め進んでグループのポテンシャルを上げるかが鍵になる。演奏中に、ロリンズがメンバーから刺激をもらい、あらたな発想を得るということもない。これは、ジャズの世界では珍しい。リーダーとメンバーという形が明確に築かれている演奏形態。「豪快な」とか「豪放な」と常に形容されるロリンズだからこそのジャズ。
1974年の第8回モントルー・ジャズ・フェスティバルで、ロリンズ・ジャズは炸裂。2千人以上の観客を圧倒した。前作In Japanは、中野サンプラザでの73年9月のライブ。ロリンズの十八番であるSt. Thomas, Alfie, Moritatなどが中心の演奏。いま一つ盛り上がりに欠けた。つまり、観客はいまのロリンズが聴きたいのである。The Cutting Edgeに収録された5曲は、アルバムとしては全て初演。最後のSwing Low, Sweet Chariotでは、バグパイプ奏者のRufus Harley(ルーファス・ハーレー)が登場。ハーレーには、かなりの自由が与えられている。ジャズには縁のないバグパイプを使うことで、ロリンズはアイデアを得ようとしたのだろう。
1. The Cutting Edge
2. To A Wild Rose
3. First Moves
4. A House Is Not A Home
5. Swing Low, Sweet Chariot
Sonny Rollins - tenor saxophone
Yoshiaki Masuo - guitar
Stanley Cowell - piano
Bob Cranshaw - electric bass
David Lee - drums
Mtume - congas
Rufus Harley - bagpipes (track 5)
Recorded on July 6, 1974 at The Montreux Jazz Festival, Switzerland.