Sonny Rollins / G-Man

1986年8月16日、ニューヨークにある彫刻公園Opus 40での野外ライブアルバム。タイトルは1曲目のG-Manを採用。邦題は「Gマン」ではなく、なぜか「Gメン」としている。というか、邦題になっていない。ロリンズ作のこのタイトルは一般的なGovernment Manのことだろうか。それともGreat Manかもしれない。だったら、ロリンズのサックスを形容して、邦題は「豪快野郎」で決まり!

まぁ、邦題はどうでも良いのだが、2曲目のKimにおいて、翌87年4月9日にスタジオでテナーサックスをオーバーダブしているのが気になる。ジャケット内の録音データには、しっかりと記載されているのだ。だが、ライナーノーツを担当した小川隆夫氏は、そのことには一切触れていない。ロリンズは何が不満だったのだろう。アルバム全体としては、ロリンズのブロウをたっぷりと堪能できるので、そんな小細工はして欲しくなかった。

1. G-Man
2. Kim
3. Don't Stop The Carnival
4. Tenor Madness

Sonny Rollins - tenor saxophone
Clifton Anderson - trombone
Mark Soskin - piano
Bob Cranshaw - electric bass
Marvin "Smitty" Smith - drums

Recorded on August 16, 1986 at "Opus 40" in Saugerties, New York.
Track 2: additional recording - tenor saxophone overdubs on April 9, 1987 at Manhattan Recording Studios, NYC.

Sonny Rollins / What's New

LPに収録されていたDon't Stop The Carnivalが、CDでは割愛されている。だからと言って、その他の収録曲の長さが増えている訳ではない。その理由は、油井正一氏によるLPのライナーノーツにあった。

最初の国内販売のとき、ミュージカルの主題歌If Ever I Would Leave Youの挿入は不可で、代わりにDon't Stop The Carnivalを挿入。再発時には、主題歌の挿入が可となり6曲構成になった。しかし、輸入盤においては、そのような制約はなく、Don't Stop The Carnivalは蚊帳の外のまま。さらに、本作の原ジャケットでは、ボサノバのアルバムとして紹介されたそうだ。実際にボサノバ曲は1つもなく、国内での当時のボサノバの状況について、油井氏が以下のように書いている。もう、60年前の出来事。

ボサノバという言葉が、日本のジャーナリズムに伝えられたのは、1962年10月のことで読売新聞がタ刊娯楽面のトップにこの現象を大々的に報道、週刊新潮もこのニュースを伝えた。「この秋、突如としてボサノバというニュー・リズムがアメリカのジャズ界にひろまりだした」と。

機をみるに敏なるキングレコードは、少女歌手梓みちよに「ボサノバ娘」なるタイトルをつけ売り出しをはかったが、一体何がボサノバなのかがわからず、ボサノバ娘もスカートを両手につまんで振りまわすのをボサノバと心得ていたフシがある。「こんにちは赤ちゃん」で彼女がヒットしたのは、ボサノバ娘の看板をはずしたあとのことだ。

実際、ボサノバは何が何やらわからぬうちにジャンジャン宣伝されて、何が何やらわからぬ内に消えてしまった。そのあと、1965年秋に、アメリカに留学していた渡辺貞夫が帰国し、「ボサノバは楽しい」と積極的にとりあげてから、はじめて本格的にきかれるようになったものである。

CD
1. If Ever I Would Leave You
2. Jungoso
3. Bluesongo
4. The Night Has A Thousand Eyes
5. Brown Skin Girl

Sonny Rollins - tenor saxophone
Jim Hall - guitar (tracks 1,4,5)
Bob Cranshaw - bass
Ben Riley - drums (tracks 1,4,5)
Dennis Charles, Frank Charles, Willie Rodriguez - percussion (tracks 1,4,5)
Candido - percussion (tracks 2,3)
Recorded on April 5 (track 4), 25 (track 1), 26 (track 5) and May 14 (tracks 2,3), 1962 in NYC.

LP
1. Don't Stop The Carnival
2. If Ever I Would Leave You
3. Brown Skin Girl
4. Bluesongo
5. The Night Has A Thousand Eyes
6. Jungoso

Sonny Rollins - tenor saxophone
Jim Hall - guitar (tracks 1-3,5)
Bob Cranshaw - bass
Ben Riley - drums (tracks 1-3,5)
Dennis Charles, Frank Charles, Willie Rodriguez - percussion (tracks 1-3,5)
Candido - percussion (tracks 4,6)
Recorded on April 5 (track5), 25 (tracks 1,2) & 26 (track 3) and May 14 (tracks 4.6), 1962 in NYC.

Sonny Rollins / Without A Song

同時多発テロ9/11の4日後に、ボストンで行われたライブ演奏。異様な雰囲気に包まれたライブだったと容易に想像できる。Bob Blumenthal(ボブ・ブルーメンソール)による2005年5月付け英文ライナーノーツには、以下のようなことが書かれている。

「ロリンズのマンハッタンのアパートは、世界貿易センターからわずか6ブロックで、ツインタワーが倒れた時、彼はアパートにいた。そして、彼は不安定になり、ボストンでのコンサートをキャンセルすることを考えた。だが、妻のルシールはキャンセルしてはいけないと諭したのだ。彼のファンの一人が、許可を受けてコンサートを録音。ロリンズ自身も録音していた。品質を損なわないようにと、二つのテープをリミックスして本作をようやく完成させた」。

アルバム化を想定したライブではなく、プロによる録音でもなかったことが分かる。そのため、ライブから4年を費やして、2005年8月30日にリリース。音が抜けないロリンズのサックス。それは肉体的衰えだけでなく、精神的な部分もあったのだろう。ならば、演奏方法を変えればいい。聴き手はかつてのロリンズを期待している訳ではない。70歳を超えたからこその巨匠の音を聴きたかったはず。変わらないロリンズ、変えられないロリンズ。それをさらけ出してしまったアルバム。

1. Without A Song
2. Global Warming
3. Introductions
4. A Nightingale Sang In Berkeley Square
5. Why Was I Born
6. Where Or When

Sonny Rollins - tenor Saxophone
Clifton Anderson - trombone
Stephen Scott - piano
Bob Cranshaw - electric bass
Perry Wilson - drums
Kimati Dinizulu - percussion

Recorded on September 15, 2001 at The Berklee Performance Center, Boston.