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このアルバムの前後から、山下洋輔はジャズをこれまでとは違う土俵に持ち込んでいった。洋輔ワールドといってもいいだろう。その世界に入り込めるかどうかは、洋輔が油断した瞬間を見逃すしかない。このアルバムでは、3曲目のChiasmaのアタマに「隙(すき)」があり、坂田明の脇も甘い。ここが狙い目。
山下トリオがそこまで計算したとは思えないのだが、「隙」を演じることで聴き手が彼らと同化できるのだ。いわゆるフリージャズとの本質的な違いがここにある。放つか受け入れるか。Frozen Daysと題されたこのアルバム。「凍りついた日々」とでも訳そうか。まさか、録音から46年後のコロナを予測していたとは思えないのだが。
1. Prophase
2. Double Helix
3. Chiasma
4. Interphase
5. Mitochondria
山下洋輔 - piano
坂田明 - alto saxophone
森山威男 - drums
Recorded on September 25, 27 & 28, 1974.
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