山下洋輔 / Grandioso

ライナーノーツで相倉久人氏が、「山下洋輔ニューヨーク・トリオ結成25周年という時間的長さをギネス記録かも?」と熱く語っている。相倉氏の意見は根本的に受け入れられない。ジャズは長さではなく密度である。極端なことを言えば、一晩でもいいから燃え尽きるようなパフォーマンスを演じることができたミュージシャンに価値がある。演じる側のプレイヤーも、その日のライブ、その日のレコーディングに賭けているはずだ。

ここでのヨースケは一つのケジメをつけようとしたのではないだろうか。Grandiosoとは、イタリア語で「大らかに、堂々とした、威厳のある」という意味。なので、このトリオはこれで堂々とお仕舞と思っていた。ところが、2017年11月に結成30周年記念アルバムを録音。相倉氏が言う通り、密度ではなく長さで勝負するのだろうか。しかも、かつてのニューヨーク・トリオに比べて、スピード感が落ちてきている。結局のところ、これ以降の彼のアルバムは、購入していないのだ。

1. Seven Tails Cats
2. Gentle Conversation
3. Trot In NYC
4. Free 25th
5. Dancing In Yellow
6. Minuet 13
7. Dancing Club
8. Bass Advent
9. Fragments From "Concerto In F"
10. Behind Red
11. Every Time We Say Goodbye

Yosuke Yamashita - piano
Cecil McBee - bass
Pheeroan akLaff - drums

Recorded on February 6 & 7, 2013 at Avatar Studios, NYC.

山下洋輔 / Sakura Live

さくらの季節がやってきた。だが、高校時代の友人多数と集まっての花見の季節ではない。石神井公園、そして母校の桜並木を愛でから、みんなで乾杯という恒例行事はコロナで吹き飛んでしまった。足利のココファームで新酒のワインを味わう秋の行事も同様。

1990年5月、山下洋輔は日本の童謡や民謡を詰め込んだアルバムSakuraを録音。そして、91年4月にスウィート・ベイジルでライブを敢行。タイトルはSakura Liveと名付けられた。ジャケットも散りゆくさくらを描いているが、収録された日本の曲は「砂山」と「兎のダンス」のみ。このアルバムの印象は、うまくまとまっているなという感じ。ヨースケの最大の魅力はハチャメチャ。次に何が出てくるか分からないと言うワクワク感であり、その一瞬前のドキドキ感である。その感じが、観客の反応から伝わってこない。というより、ヨースケの演奏スタイルに対する反応の仕方を知らないのだろう。結果的に、ヨースケも前のめりになっていない。残念ながら、ライブ感があまり出ていないライブアルバムなのだ。

1. New Tune
2. Poetry Leg Room
3. Hikalu Express
4. Sunayama
5. Peace Maker
6. Usagi No Dance
7. CP Blues

Yosuke Yamashita - piano
Cecil McBee - bass
Pheeroan akLaff - drums

Recorded on April 25 & 27, 1991 at Sweet Basil, NYC.

山下洋輔 / Sakura

日本の童謡や民謡をアレンジして自分の曲にするミュージシャンはいるが、山下の発想はぶっ飛んでいる。原曲の特異的な部分を抜き出し山下流に料理して、あとは味付けを加えていく。山下にとって、原曲はきっかけでしかない。「とりあえずビール!」と同じ。

だが問題は、ベースのセシル・マクビーとドラムのフェローン・アクラーフの味付けである。彼等の根底には、「砂山」、「月の砂漠」、「兎のダンス」などの原曲イメージを持ち合わせているはずがない。つまり、演奏しながら「ソソラ ソラ ソラ 兎のダンス」と、口ずさむことはないのだ。一方の山下は「GGA」と鍵盤を叩かなくても、頭の中は「ソソラ」のはず。小川隆夫氏のライナーノーツには、マクビーのコメントが載っている。「別に今回のレパートリーが日本の古い唄だということは意識していない。ヨースケとやる時は、常に彼の音楽をやっているという気持ちが働いているからだ」。ということで、「タラッタ ラッタ ラッタ」と3人が踊り出すことは決してないのだ。

1. Sakura / さくら さくら
2. Yurikago / ゆりかごの唄
3. Haiku / 5-7-5
4. Amefuri / 雨降りお月さん
5. Ano Machi / あの町この町
6. Dobarada / ドバラダ
7. Sasa No Ha / たなばださま
8. Sunayama / 砂山
9. Tsuki No Sabaku / 月の砂漠
10. Usagi No Dance / 兎のダンス
11. Nenkorori / 中国地方の子守唄

山下洋輔 - piano
Cecil McBee - bass
Pheeroan akLaff - drums

Recorded on May 1, 2 & 3, 1990 at Clinton Recording Studios, NYC.