Bob Dylan / ボブ・ディラン自伝

2005年7月29日発行 ソフトバンク・クリエイティブ株式会社 1800円。365ページ。第1章「初めの一歩」、第2章「失われた土地」、第3章「新しい夜明け」、第4章「オー・マーシー」、第5章「氷の川」。

第3章は、1970年夏に録音したアルバムNew Morningを示しているものの、レコーディングの経緯よりもウッドストックでの生活を中心に描いている。そして、本書の核となるのは第4章。ページ数が最も多く、1989年前半に録音したアルバムOh Mercyに関して詳細に記述している。ディランにとって、大きな変曲点となったアルバムであったことが分かる。このアルバムの制作に着手する前の心境を、ディランは次のように書いてる。

「わたしには歌をつくりたいという強い欲求がまったく湧いてこなかった。いずれにしても長いあいだ、歌をつくってはいなかった。わたしは曲づくりをやめていた。つくりたいという気持ちがなくなっていた。最近の何枚かのアルバムには、自作曲がさほど入っていない。ソングライターでいるということについて、わたしはこれ以上ないくらい無頓着でいた。すでにたくさんの曲をつくっており、それで充分だった。わたしは必要なことをすべてやって目標に到達したのであり、それ以上の目標を持っていなかった。〈中略〉ふたたび何かを書こうとは決して思わない。どちらにしても、歌はこれ以上必要なかった」。

しかし、Oh Mercyの1曲目に収められたPolitical Worldの詩が、突然として湧いてくる。それをきっかけにして、ディランは復活した。

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