植草甚一 / モダン・ジャズのたのしみ

1976年7月20日初版・晶文社。何年振りだろう、この本を開いたのは。読み始めてすぐに『モダン・ジャズを聴いた600時間』という章が出てくる。この章の冒頭を抜粋。

「昨年の夏のおわりころから、急にモダン・ジャズがすきになってしまって、毎日のようにジャズのレコードばかりかけながら、うかうかと日を送っていた。だいたいの計算だと600時間くらいジャズをきいて暮らしていたし、そのあいだレコード店にいたのが200時間くらいあった。約半年をモダン・ジャズでつぶしたのが800時間・・・」。

一日当たり800÷6÷30≒4時間半となる。そう考えると、ジャズにどっぷりという感じは受けないが、「急にモダン・ジャズがすきになってしまい」というのが植草氏らしい。この章は、1957年4月号『映画の友』に掲載された。それから10年経たない間に、この本がまとめられたことになる。つまりジャズ歴10年選手によるモダン・ジャズの本なのだ。自分はジャズを聴き始めて45年ほどだが、植草氏の足元にも及ばない。そして、帯には『ジャズ入門書』とあるが、章が進むにつれて初心者には極めて高度な内容になっていく。入門はさせてくれるが、簡単には卒業させてくれない。

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