Bob Dylan / Planet Waves

このアルバムは、ザ・バンドとの共演で制作したラブソング集。それもそのはず、最初の発表段階では「ラブ・ソングス」というタイトルだったらしい。ラストのWedding Song(婚礼の歌)だけが、ディランの弾き語りで、その4番の歌詞には「三人もの子供に囲まれ、私は救われた」とある。つまり、結婚する歌ではなく、自身の結婚生活の歌なのである。ディランのラブソングは、一筋縄ではいかない。

録音は1973年11月。このデータは重要。Something There Is About Youもラブソングだが、2番の歌詞にはDanny Lopezなる人物が登場。71年のデビューから23連勝した元WBC世界フェザー級チャンピオンのボクサー。この曲を作った頃は、まだ10連勝前後だったはず。タイトルを取ったのは76年11月。ディランはジムに通うほどのボクシングファン。未来のチャンピオンをこの歌に登場させてしまったのだ。

そして、2つのバージョンが収録されたForever Youngが、意外にもラブソングではない。この歌詞を翻訳して絵本にした『はじまりの日』(訳:アーサー・ビナード Arthur Binard)には、ディランによるこの曲の解説が載っている。「ぼくはひとりアリゾナ州に行って、そこで息子のことを思いながら〈フォーエバーヤング〉という歌をつくった。べつに作詞作曲をやろうと意気込んだわけじゃなく、自然にうかんできて、そのままできあがった。なるべく感傷的にならないように、ちょっと努力しただけだ」。以下は、ビナードによる訳詞の最初の部分。ディランの作品の中で、自分が最も好きな曲の一つ。

きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように
きみのゆめが いつか ほんとうに なりますように
まわりの 人びとと たすけあって いけますように
・・・

1. On A Night Like This
2. Going, Going, Gone
3. Tough Mama
4. Hazel
5. Something There Is About You
6. Forever Young
7. Forever Young
8. Dirge
9. You Angel You
10. Never Say Goodbye
11. Wedding Song

Bob Dylan – guitar, piano, harmonica, vocals
Rick Danko – bass guitar
Levon Helm – drums
Garth Hudson – organ
Richard Manuel – piano, drums
Robbie Robertson – guitars

Recorded on November 5, 6 & 9, 1973 at Village Recorder in West Los Angeles, CA.

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