日本の童謡や民謡をアレンジして自分の曲にするミュージシャンはいるが、山下の発想はぶっ飛んでいる。原曲の特異的な部分を抜き出し山下流に料理して、あとは味付けを加えていく。山下にとって、原曲はきっかけでしかない。「とりあえずビール!」と同じ。
だが問題は、ベースのセシル・マクビーとドラムのフェローン・アクラーフの味付けである。彼等の根底には、「砂山」、「月の砂漠」、「兎のダンス」などの原曲イメージを持ち合わせているはずがない。つまり、演奏しながら「ソソラ ソラ ソラ 兎のダンス」と、口ずさむことはないのだ。一方の山下は「GGA」と鍵盤を叩かなくても、頭の中は「ソソラ」のはず。小川隆夫氏のライナーノーツには、マクビーのコメントが載っている。「別に今回のレパートリーが日本の古い唄だということは意識していない。ヨースケとやる時は、常に彼の音楽をやっているという気持ちが働いているからだ」。ということで、「タラッタ ラッタ ラッタ」と3人が踊り出すことは決してないのだ。
1. Sakura / さくら さくら
2. Yurikago / ゆりかごの唄
3. Haiku / 5-7-5
4. Amefuri / 雨降りお月さん
5. Ano Machi / あの町この町
6. Dobarada / ドバラダ
7. Sasa No Ha / たなばださま
8. Sunayama / 砂山
9. Tsuki No Sabaku / 月の砂漠
10. Usagi No Dance / 兎のダンス
11. Nenkorori / 中国地方の子守唄
山下洋輔 - piano
Cecil McBee - bass
Pheeroan akLaff - drums
Recorded on May 1, 2 & 3, 1990 at Clinton Recording Studios, NYC.