本田竹曠 / In A Sentimental Mood

アルバムMy Funny ValentineとIn A Sentimental Moodは、同日の録音で同じメンバーによるトリオ。どちらにもスタンダード曲が並ぶが、例外が3曲ある。前者にはLittle B's PoemとBlues On The Corner、後者にはOnce I Lovedというスタンダードとは言えない曲が入っている。Little B's Poemはボビー・ハッチャーソンの作品でアルバムComponentsに、Blues On The Cornerはマッコイ・タイナーの作品でアルバムThe Real McCoyにそれぞれ収録されている。一方のOnce I Lovedはアントニオ・カルロス・ジョビンの作品。マッコイは、この曲をアルバムTridentで取り上げた。

2枚のアルバムに収録されたスタンダード以外の曲から、本田が志向していたジャズが見えてくる。そして、特にマッコイに傾倒していたことが分かるのだ。上質で重厚な2枚のアルバムなのに、安易に曲名をタイトルにし、さらに2枚に分けてリリースしたことに疑問が残る。Honda Standard Plusのようなタイトルで2枚組を発売すべきだった。

1. Mr. P.C.
2. Misty
3. A Night In Tunisia
4. Body And Soul
5. Autumn Leaves
6. Once I Loved
7. In A Sentimental Mood
8. Everything Happens To Me

本田竹曠 - piano
井野信義 - bass
森山威男 - drums

Recorded on April 3 & 4, 1985 at CBS SONY Shinanomachi Studio, TOKYO.

本田竹曠 / My Funny Valentine

ピアノトリオによるスタンダード集と言えば、キース・ジャレットをすぐに思い浮かべる。キースのアルバムStandards, Vol.1 & 2が録音されたのは1983年1月で、同年中にリリース。それから2年余りが過ぎた85年4月、本田竹曠がアルバムMy Funny ValentineとIn A Sentimental Moodを録音。本田がキースを意識していたかは分からないが、80年代半ばに新しい流れが沸き起こったことは事実だ。

しかしながら、決定的に違うのは、キースがピアノトリオというフォーマットの可能性を長い期間かけて徹底的に追求したのに対し、本田は残念ながら一発花火で終えてしまった。キースのトリオに比べ、より上質であり、かつ重厚さを感じるのだが…。今だから言えるのだろう、継続が前提ではなかったトリオが一瞬輝いたような、ある種の寂しさがここにある。

1. On Green Dolphin Street
2. Stella By Starlight
3. My Funny Valentine
4. Little B's Poem
5. The Shadow Of Your Smile
6. Blues On The Corner
7. My One And Only Love
8. 'Round Midnight

本田竹曠 - piano
井野信義 - bass
森山威男 - drums

Recorded on April 3 & 4, 1985 at CBS SONY Shinanomachi Studio, TOKYO.

本田竹曠 / Salaam Salaam

CD帯から。『強靭なタッチとブルージーなフィーリングを持つピアニストが、米国のリズム隊と組んだ渾身のトリオ・ミュージック。圧倒的な破壊力を持つ「マイナーズ・オンリー」、“平和”を意味するスワヒリ語のタイトル曲など、魅力的なオリジナルが並ぶ』。ここでのリズム隊とは、ベースのJuini Booth(ジュニ・ブース)とドラムのEric Gravatt(エリック・グラヴァット)のこと。

原田和典氏の2014年12月付けライナーノーツによると、このリズム隊が菊池雅章の帰国ツアーに参加して全国縦断している間を縫って、1974年6月16日に本作の録音が企画されたとのこと。そして、「もう少し練習を積んでからやりたかった」と本田が語ったとある。確かに3人は全力投球なのだが、緊張感のある駆け引きに少し物足りなさを感じる。ちなみに、菊池のアルバムEast Windは、日野晧正、峰厚介、ブース、グラヴァットのメンバーで7月3日に録音されている。

1. Minors Only
2. Natural Tranquility
3. Salaam Salaam

本田竹曠 - piano
Juini Booth - bass
Eric Gravatt - drums

Recorded on June 16, 1974 at Victor Studio, Tokyo.