本田竹曠 / This Is Honda

日本のジャズアルバムを代表する一枚。唯一の欠点は、オリジナルの作品がないこと。原材料は輸入なのである。ジャズの演奏において、テーマとなる楽曲はある意味できっかけでしかない。それを基材にしたアドリブが勝負の世界。だが、一つの例として、3曲目の'Round Midnightで原作者のモンクを超えることは決してできなかったはず。

タイトルをThis Is Hondaとしたならば、自身の作品を少なくとも一曲は持ち込むべきだったろう。海外で通用するアルバムにならなかった理由が、ここにあると思う。本作の2ヵ月前に録音されたチック・コリアのアルバムReturn To Foreverが一つの指針だった。厳しい言い方だが、本田の甘さがここにあった。

1. You Don't Know What Love Is
2. Bye Bye Blackbird
3. 'Round Midnight
4. Softly, As In A Morning Sunrise
5. When Sunny Gets Blue
6. Secret Love

本田竹曠 - piano
鈴木良雄 - bass (except track 3)
渡辺文男 - drums (except track 3)

日野皓正 / OFF THE COAST

ジャケットのイラストは日野皓正の作品。マイルスは、1982年から83年に録音したアルバムStar Peopleで自分のイラストをジャケットに使った。ヒノテルがマイルスを意識したのか分からないが、トランペットもイラストもマイルスのアルバムを上回っている。

ジャケット内には、ヒノテル自身による解説が記載されていて、「このアルバムタイトルOFF THE COASTの意味は、〈沖〉〈離れたところに旅立っていく〉〈宇宙の中で飛んでいる〉〈今までのところから一段階ステップ・アップ〉等、色々な解釈ができるが、今までの保守派のジャズから自由な世界に羽ばたいてOFF THE COASTに行こう、という感じを出したかったんだ」とある。ここでの「保守派」とは、単純な4ビート、そしてアドリブの受け渡しを示しているのだろう。だとすれば、狙い通りに重厚で解放感のある作品に仕上がっている。

1. Prologue - (Gifu) Gift
2. Nautilus
3. Gate
4. Kotobuki
5. Echo
6. Big Foot
7. Equinox
8. Epilogue - (Gifu) Gift

Terumasa Hino / 日野皓正 - trumpet, pocket trumpet, piccolo trumpet
Dave Liebman - soprano saxophone
Oliver Lake - alto saxophone
Abraham Burton - alto saxophone
Masabumi Kikuchi / 菊地雅章 - piano
Carlton Homes - piano
Jay Anderson - bass
Motohiko Hino / 日野元彦 - drums
Michael Carvin - drums, voice
Andrew Syrille - drums

Recorded on February 4, 5 & 6, 1997 at CLINTON Studio, NYC.

日野皓正 / Triple Helix

『第2回 ヤマハ・ジャズ・フェスティバル・イン・浜松』でのライブ録音。ライブとは思えない緊張感の高い演奏。当日の司会を務めた油井正一氏がライナーノーツを担当。「前日午後二時間を費やしたリハーサルのほか、夕刻からのウェルカム・パーティも中座して、市内に借りたスタジオでさらに慎重なリハーサルを続けた」とある。そして、収録曲はステージのままで「盛大な拍手とともにアンコールとしてThe Saphire Wayが演奏されたのだが、CDでは続いての演奏のように編集されている」と。

つまり、ライブをほぼ忠実に再現したアルバム。ただし、分からないことが1つある。タイトルのTriple Helixとは三重螺旋体のこと。日野皓正、菊地雅章、富樫雅彦の三人を示しているのだろうが、ベースのJames Genus(ジェームズ・ジナス)は蚊帳の外なのだ。ジャケット表にも彼の文字はない。そもそもジナスを組入れた理由が分からない。ベースはコンボのまさしく要である。その点について、油井氏は一言も触れていない。螺旋階段から突き落とされた感じだ。

1. Trial
2. Dr. U
3. Twilight South West
4. Blue Monk
5. The Saphire Way

日野皓正 - trumpet
菊地雅章 - piano
富樫雅彦 - percussion
James Genus - bass

Recorded on April 18, 1993 at The 2nd YAMAHA Jazz Festival In Hamamatsu.